EU、ネット大手に新規制 グーグル・アマゾンなど対象
【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)はグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックなどIT分野の米巨人企業への監視を強める。EUの欧州委員会は26日、取引先企業への一方的な契約の押しつけを防ぐための新規制案を公表。小規模企業もIT巨人に法的に対抗できるよう調停制度をつくる。寡占化の懸念が強まるデジタル市場で公正な競争を確保するねらいだ。偽ニュース対策でも自主規制の強化を求めた。
グーグルやアマゾンなどIT企業は外部の企業にインターネット上の事業のプラットフォーム(基盤)を提供しているため「プラットフォーマー」と呼ばれる。EUの執行機関である欧州委が26日、加盟国と欧州議会に新規制を提案。修正を経て最短で2019年に承認される可能性がある。
新規制の対象は、50人以上を雇用して売上高が1000万ユーロ(約13億円)超のプラットフォーマー。提供するサービスを使う企業・個人がEU域内にいれば本社所在地の場所にかかわらず、世界中のプラットフォーマーが対象になる。「GAFA」と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのIT巨人4社に加え、楽天なども含まれる。
新規制では、プラットフォーマーが守らなければならないEUレベルのルールを明確にする。
たとえば、ネット検索ランキングで取引先企業の商品やサービスの順位をつける場合、その評価基準などを情報開示するよう義務づける。プラットフォーマーが自前で提供するサービスを優遇するのを防ぐねらいもあるとみられ、スマートフォンのアプリストアでのランキングも対象だ。
事前告知なしでランキングから削除することも禁じる。従来は「違法」な取引の範囲があいまいで、不当な取引を強いられてもプラットフォーマーからの報復を恐れて「泣き寝入り」する企業が少なくなかった。
欧州委の調べでは、売上高の過半をプラットフォーマーの利用に依存している企業の75%が取引で問題を抱えたことがある回答した。新規制で違法な行為を明確に定め、取引先企業が抗議や意見表明をしやすくする。
不当な取引を迫られた企業を救済しやすくする。苦情処理制度を導入し、対応状況を1年ごとに公表するようプラットフォーマーに求める。新規則に違反した場合、業界団体単位でプラットフォーマーを提訴できる団体訴訟制度も導入する。取引先企業から申し立てがあれば、調停に応じることをプラットフォーマーに義務づける。
偽ニュース対策の強化も求める。欧州委は26日、プラットフォーマーに7月までに行動規範をつくり、自主規制を強めるよう要求。年末までに偽ニュースが減らなければ法規制導入も検討する。
19年に欧州議会選挙を控えるEUでは、偽ニュースによる選挙への介入を警戒する声が強い。3月中旬には、フェイスブックの個人データを英コンサルティング会社が不正に取得していた事件が発覚。EUのIT大手への姿勢が強硬になった。
プラットフォーマーの巨大化が進み、欧米で政治介入を招きやすくなっている面がある。一方で過度な規制は投資意欲を低下させ、デジタル分野の技術革新を妨げるおそれがある。EU規制は世界的な論議に火をつけそうだ。
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