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物理の本質を突く問題を提起 ホーキング博士

日経サイエンス

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3月に死去した英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士は、20代で進行性の難病に侵され、歩行も声も奪われたが、思考を宇宙に広げ、ブラックホールや宇宙の成り立ちについての理解に飛躍をもたらした。また物理学の本質を突く、追究する価値のある問題を提起し、半世紀にわたって理論物理学をけん引した。

「彼は何か問題を解いたというより、問題を提起した人だ」と東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長は話す。特に1975年に提起した「ブラックホールの情報問題」は、その後40年以上にわたって理論物理学の中心的な研究テーマとなった。「いわば池の中に大きな石を投げ込んで、物理学者を驚かせたようなものだ」(村山機構長)

発端はホーキング博士が1970年代前半、ブラックホールの境界である「事象の地平」が常に増加することを突き止めたことだ。そこから「ブラックホールは事象の地平の面積に比例するエントロピーを持つ」ことを見いだした。この発見はそれまでの定説を覆した。もしブラックホールがエントロピーを持つなら、熱力学公式によって温度も持つ。そして温度を持つ物体はエネルギーを放射する。すべてをのみ込むブラックホールがエネルギーを放射するということを、どのように理解すればよいのか。

ホーキング博士は「驚くべき思考の飛躍により、この放射を説明した」と米カリフォルニア工科大学の大栗博司教授は指摘する。量子力学によれば、真空は単に何もない状態ではない。量子的なゆらぎによって、常に粒子と反粒子が同時に生成し、同時に消滅することをくり返している。ホーキング博士は、生成した粒子か反粒子のどちらか一方がブラックホールの中に落ち込むと他方はブラックホールから飛び去ることができると明らかにした。これが放射の正体だ。ブラックホールは放射を続け、いつかは蒸発してしまう。

このことは新たな問題を生み出した。ホーキング博士の近似的な計算によれば、放射にはブラックホールに落ちこんだ物体の情報は含まれていない。つまり、情報を再び得ることはできない。だが物理学において「情報」は、移動することはあっても失われることはないものだ。果たして、ブラックホールに落ちこんだ情報は消えるのか。

ホーキング博士は1975年にこの「ブラックホールの情報問題」を提起した。多くの物理学者が取り組んだが答えはなかなか見つからず,ホーキング博士は1997年、米カリフォルニア工科大学のジョン・プレスキル教授とこの問題の行方について賭けをした。ホーキング博士と同大のキップ・ソーン教授は「ブラックホールにのみ込まれた情報は永遠に隠され、外に出てくることはない」という予想に賭け、プレスキル教授は「研究がさらに進めば、ブラックホールに投げ込まれたもとの情報が得られる過程が見つかる」方に賭けた。

9カ月後,ハーバード大学のファン・マルダセナ准教授(当時)が、超弦理論にもとづく新たな方法で、ホーキング放射によって情報が解放されていること示した。この発見は、相対性理論と量子力学を統合する量子重力論への重要な一歩となった。賭けに負けたホーキング博士は「約束通りプレスキル氏に彼の好きな情報が詰まった野球百科事典を贈った」(大栗教授)という。

ホーキング博士は何度かこうした賭けをしたが「そのほとんどに負けている」と村山機構長は語る。「ホーキング博士は『ここに問題があります。みなさんどう考えますか』と問題を提起し、自分を負かせてくれればそれでいいという考えの人だったのではないか」

ブラックホールの情報問題は、完全に解決されたわけではない。ブラックホールが具体的にどのようなメカニズムで情報を解放しているかについては、今も研究が続いている。

昨年ケンブリッジ大学で行った講演の最後を、ホーキング博士はこう締めくくった。「足元を見下ろすのではなく星を見上げよう。見えるものを理解しようと試み、なぜ宇宙が存在するのかを考えよう。人生がいかに困難に見えても、必ず自分にできること、成し遂げられることがある。大切なのは諦めないことだ。どうもありがとう」

村山氏、大栗氏による詳しい解説と、若き日のホーキング氏自身による記事を、販売中の日経サイエンス6月号に掲載している。

日経サイエンス 2018年 06 月号 [雑誌]

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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