「携帯2年縛り是正を」 総務省の有識者会議
総務省のモバイル市場に関する有識者会議は20日、最終会合を開き、昨年12月から続けてきた議論の報告書をまとめた。携帯電話大手に対して「2年縛り」契約の是正を要請する方針を示したものの、格安スマートフォン(スマホ)事業者が求めた携帯大手傘下のサブブランドに対する規制導入は不発に終わった。急成長してきた格安スマホ業界にとって満額回答と言えない内容だ。
会議は独立系の格安スマホ事業者の不満を背景に、総務省が大学教授やコンサルタントを集めて計6回開催した。一貫して独立系格安事業者と携帯大手が対立する構図で議論が進んだ。
独立系格安事業者にとっては2年縛りの見直しが朗報となる。報告書では2年間の契約が切れた後に自動的に契約を更新する仕組みの是正を携帯電話大手に要請する方針を示した。
2年縛りは決められた期間に解約しなければ違約金がかかる仕組み。是正されれば消費者は格安スマホへの移行がしやすくなる。携帯大手にとっては顧客を囲い込む力が弱くなり、流出につながりやすい。
中古端末の流通促進も一歩前進した。報告書は、仮に携帯大手3社が国内市場への中古端末の流通を制限しているとしたら「業務改善命令の対象とするよう、指針を策定する」と踏み込んだ回答を示した。海外と比べ日本は中古端末の流通が少ないといわれる。中古端末が増えれば、格安スマホで扱える選択肢が増え事業者を後押しする。
一方、携帯大手傘下のワイモバイルやUQモバイルといったサブブランドへの規制強化は結論が出なかった。両社が提供する格安通信サービスはトラフィックが混雑していても速いという。楽天やケイ・オプティコムといった独立系の格安スマホ事業者が「携帯電話大手がサブブランドを優遇しているのではないか」と疑念を示し、規制強化を訴えた。
これを受け、総務省は格安スマホ事業者のネットワークの運用状況を調査し、携帯大手がサブブランドを優遇している実態は見られなかったと結論づけた。報告書では規制強化を「継続検討」とし、格安スマホ事業者の主張を事実上退けた。
ショップや広告宣伝が少なく、回線を大手から借りる格安スマホは料金が安い。携帯大手で月額7千円かかるプランの場合、格安事業者は4千~5千円程度で提供する。総務省は格安事業者の育成を通じ通信料金への家計の負担を減らし消費を喚起したい意向がある。
総務省はこれまでSIMロックの解除期間を短くするなど格安事業者を優遇してきた。小林史明総務大臣政務官は「報告書は事実をチェックして整理した内容を詰め込んだ」と強調する。サブブランドも値下げにより上位ブランドとのカニバリズム(食い合い)が起きている。報告書はこれまでの格安一辺倒からバランス重視に傾いたようにみえる。(堀越功)