沖縄ではしか流行 GW旅行控え、感染拡大に警戒
強い感染力を持ち、高熱や発疹などの症状が出るはしかが沖縄県で流行している。外国人旅行者から感染が広がり、19日までの約1カ月間で感染者は65人に上る。一部の病院で入院患者への面会が禁止となったほか、中学校で学級閉鎖が出るなど影響が広がっており、多くの旅行者が沖縄を訪れる5月の大型連休を控え、感染拡大への警戒が高まっている。
東京・渋谷駅近くにある「MYメディカルクリニック」。笹倉渉院長(38)は18日朝からワクチン接種を求める会社員らの対応に追われた。この日だけで予約は15人。沖縄での感染拡大のニュースが伝わってから「大型連休に沖縄旅行を計画している人の問い合わせが増えた」と驚く。
例年なら予防接種に使うワクチンの在庫は数本程度。だが今年は希望者が多く見込まれることから17日に50本を急きょ確保したという。
はしかは「麻疹ウイルス」によって起こる感染症で、発熱や全身に発疹がでる。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症する。合併症で肺炎や脳炎などを引き起こし、重症化する可能性があり、妊婦の場合は流産の恐れもあるという。
沖縄県での流行のきっかけは台湾から来た30代の男性旅行者だ。3月19日発疹などの症状を訴え医療機関を受診。翌日、はしかと診断された。男性は同17日から3日間、県内を旅行しており、飲食店などの従業員や客らに感染したとみられる。
県によると、4月19日までの感染者は0歳児から50代の男女65人。生徒1人が感染した名護市内の中学校が16日午後から20日まで学級閉鎖の措置を取ったほか、一部の病院で入院患者への面会を原則禁止にするなどの影響が広がっている。
沖縄県には県外からの旅行者が多く、感染が全国に広がる可能性も高い。名古屋市では11日、10代の男性の感染が発覚した。男性は3月28日から4月2日まで沖縄を旅行し、同4日から7日まで埼玉県内にいて同日夕、新幹線で市内に戻った。感染拡大は確認されていないが、同市の担当者は「今後発症する人がいるかもしれない」と警戒を強める。
はしかは感染力が強く、空気感染や飛沫感染など感染経路も多様。マスクや手洗いなどで感染を防ぐことが難しい一方、ワクチンを2回接種することで確実に免疫ができるとされる。
国内では1978年に定期予防接種が始まったが、2回接種になったのは2006年。国立感染症研究所感染症疫学センターによると、90年4月1日以前に生まれた人は2回接種を受けていない可能性があり、中高年には未接種の人も少なくない。
同センターの多屋馨子第3室長は「母子健康手帳などを確認し、1歳以上で2回接種をしていない人や、過去に感染した経験がない人は、5月の大型連休で旅行などをする前は早めのワクチン接種を」と呼びかけている。
07年の流行で大学休講も、外国人客増えリスク高まる
日本はかつて患者数が20万人を超え、海外から「はしか輸出国」と非難されていた。2001年の流行では推計約27.8万人の患者が発生し、21人が死亡した。
だが06年に2回の定期予防接種が導入されるなど対策が進んだことで患者数が激減。15年には世界保健機関(WHO)から国内に土着の麻疹ウイルスが存在しない「排除状態」と認定された。
00年代以降の大流行は07年。成人を中心に患者が増加し、早稲田、慶応、上智などの大学が休講やキャンパス立ち入り禁止などの対応を迫られた。都立高校でも臨時休校が相次いだ。
国立感染症研究所によると、近年は患者数が数十~数百人程度で推移。大流行は起きていないが、訪日客の増加に伴い、ウイルスが海外から持ち込まれるリスクが高まっている。