ラグビー神戸製鋼、NZの知将 一体感生む
総監督にウェイン・スミス氏
ラグビー・トップリーグの神戸製鋼が新シーズンに向けて始動した。今季の目玉はニュージーランド代表コーチなどを務めたウェイン・スミス氏(61)の総監督就任。クルセーダーズ(ニュージーランド)を世界最高峰リーグ「スーパーラグビー(SR)」制覇に導くなどした手腕に15季ぶりの優勝が懸かる。
9日、神戸市内で新シーズンの練習をスタートさせたチームは活気に満ちていた。その中心にいたのがスミス総監督。至近距離でのパス練習やタックラーをかわして前進するメニューで、軽やかな身のこなしで動きを指示する様子は60代とは思えぬほどだった。
練習後に開かれた就任記者会見では、1928年創部のチームへの敬意を表した。「このチームは製鋼所の従業員のために90年前にできた。歴史に誇りを持って挑戦し、将来に残るものをつくりたい」
SOだったスミス氏はニュージーランド代表などで活躍し、現役引退後はヘッドコーチとしてクルセーダーズを98年からSR2連覇に導いた。ニュージーランド代表も指揮し、2011年と15年はアシスタントコーチの立場で同国のワールドカップ(W杯)優勝に貢献した。
神戸市を拠点に活動したワールド(09年に休部を発表)での指導経験があるスミス氏が今回、再び日本に来ることになった背景に、SRのチーフス(ニュージーランド)でアシスタントコーチを務めたことがある。
チーフスは神戸製鋼と提携関係にあるチーム。その要職にあったスミス氏が昨年、ニュージーランド代表コーチを退任するとの情報を耳にした神戸製鋼の福本正幸チームディレクターは、スミス氏の招請を発案。ワールド時代に神戸製鋼の大黒柱だった平尾誠二氏と知り合い、チーフスの一員としても関西の雄との浅からぬ縁を感じてきたスミス氏は、福本氏のオファーを二つ返事で引き受けた。
スミス氏が今季、日本に滞在するのは15週間ほど。不在の間は、同じく新任のデーブ・ディロン・ヘッドコーチ(元NECコーチ)がスミス氏と連絡を取りながら指揮を執る。
複数の選手による統率を理想とするスミス氏は共同主将制を導入。昨季から主将の前川鐘平に加えて、新たにアンドリュー・エリスが就任した。そのエリスは初回の練習後、「何人かの選手の目を見て、明らかに今までと違うと感じる」と知将の加入による変化を語った。近年にない一体感に包まれる神戸製鋼。久方ぶりの覇権奪回へ、まずは好スタートを切った。
(合六謙二)