EU、WTOに米との協議要請 鉄鋼輸入制限巡り
「恒久除外」へ米に圧力
【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は米国が3月に発動した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を巡って、世界貿易機関(WTO)に対して米国との協議を要請した。EUはWTOへの通知文書で、米国は「国家安全保障」を輸入制限の理由に掲げているが、実態は自国産業を守るための緊急輸入制限(セーフガード)だと指摘。協議でWTOルールに基づく補償を求めていく構えを示した。
EUが求めた米国との協議はWTOのセーフガード協定に基づく措置。一方的な輸入制限を禁じるWTOは同協定で、セーフガード発動の際には関係国・地域と事前協議するよう定めている。発動で影響を受ける国・地域は損害を埋め合わせるための補償を相手国に求められる。
米国は国家安全保障上の脅威を理由に輸入制限できる米国独自の通商拡大法232条に基づく措置として、鉄鋼・アルミの輸入制限を一方的に発動した。一方的な輸入制限を禁じるWTOも、安全保障が理由ならば「例外」扱いを認めており、WTOのセーフガード協定には縛られないというのが米国側の主張だ。
ただWTOが16日公表したEUからの協議要請の通知書で、EUは米国の輸入制限について「本質的にはセーフガード措置だ」と指摘。WTOルールに沿って「できるだけ早期」の米国との協議を求めるとともに、米国に補償を求めていく姿勢を示した。
EUは米国の鉄鋼・アルミ輸入制限を巡り、5月1日までの暫定的な適用除外を受けたが、恒久的に除外すべきだと米に求めている。EUで通商政策を担うマルムストローム欧州委員は18日、仏ストラスブールの欧州議会で記者会見し「米国がEUを無条件で恒久的に除外するならば、通商協議に応じる構えがある」と語った。
WTOへの協議要請は、国際ルールに基づく手続きを粛々と進めることで、米国に「恒久除外」への圧力をかける狙いがある。EUは米国が最終的に欧州にも輸入制限を発動した場合に備え、報復関税の品目リストの作成にも着手している。
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