客室料金いつでも最適 ホテル経営分析の空
ホテル経営分析サービスの空(東京・渋谷)は17日、都内で記者会見を開き、市場分析ツール「ホテル番付」を刷新すると発表した。競合ホテルの価格や予約状況といった情報収集のみならず、機械学習によって客室の料金を引き上げるタイミングを自動的に提案する機能を備える。5月の大型連休を控え、人手が不足しがちな中小ホテルにとって頼もしい存在となりそうだ。
「非効率な業務を可能な限り自動化する」。空の松村大貴社長はこう強調した。24日にリニューアルするホテル番付は客室の予約ペースが減少したり、競合ホテルの料金が変化したりしたときに客室の料金設定の見直しなど改善策を促す。目指すのは「従業員が操作するツールから一緒に働くチームメイトのような存在」だ。
ホテル番付はインターネット上で公開されている全国2万軒以上のホテル・旅館の宿泊料金や予約状況などを自動的に集めることで、自社のホテルがどのような立ち位置にいるかを可視化するサービスだ。2017年8月の開始以降、導入先は1500を超えた。数十室の中小ホテルから、2千室の大手まで利用しているという。
ただ、ホテル番付はこれまでは利用者がパソコン画面を見ながら情報を収集するツールとの位置づけだった。受け身ではなく能動的に使いこなせれば大きな力を発揮する一方で、利用者側の十分な知識や時間が必要になるなど弱点もある。松村社長は「分析結果を基に、気づきを代理人のように提案する『エージェント型サービス』をめざす」と抱負を語った。
深刻な人手不足、民泊など新しいライバルの登場――。ホテル業界にとって競争環境は今後さらに厳しくなる見通しだ。一方で従業員は競合の宿泊料金や周辺のイベントなどを毎日調べて、料金を設定していることが多い。接客以外の業務に追われ、フロントの仕事などに思うように時間を割けていないのが現状だ。松村社長は「利用者が企画やおもてなしなど本当に必要な仕事に注力できるようにしたい」と強調した。
空は15年の設立。ベンチャーキャピタル(VC)の米500スタートアップスの日本法人や独立系VCのインキュベイトファンド(東京・港)などが出資している。人工知能(AI)を使って、競合やイベントの開催状況に応じてホテルが料金設定を変えられるツール「マジックプライス」も展開している。ホテル番付の料金体系は客室数に応じて変わるが、基本料金は月8千円から。(駿河翼)
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