米英仏、シリア政権軍を攻撃 化学兵器使用と断定
ロシアの反発必至
【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は13日、シリアのアサド政権に対して米軍が攻撃したと発表した。フランスと英国も参加し、アサド政権の3カ所の化学兵器関連施設を対象とした。トランプ氏はアサド政権の後ろ盾となるロシアを非難した。ロシアや、同国とともにアサド政権を支援するイランとの対立が深まるのは必至だ。
トランプ氏は同日夜(日本時間14日午前)、ホワイトハウスで国民向けの演説に臨み、アサド政権による化学兵器の使用は「人間のやることではない。怪物がやる犯罪だ」と批判した。「攻撃の目的は化学兵器の生産や拡散、使用に対して強い抑止力を確立することだ」と説明。「アサド政権が禁止された化学兵器の使用をやめるまで、この行動を継続する用意がある」と述べた。
国防総省によると、攻撃は米東部時間午後9時ごろに始まった。対象は首都ダマスカスと中部ホムス近郊にある化学兵器の研究開発センターや貯蔵・生産施設。ロイター通信によると、攻撃には巡航ミサイル「トマホーク」が使われた。アサド政権への攻撃は2017年4月以来となる。
マティス米国防長官は13日夜の記者会見で「前回よりも大規模な攻撃になった」と強調、前回の2倍の兵器を使用したと説明した。
対象は前回が1カ所だけだったが、今回は市民にも被害が及びかねない首都近郊も攻撃した。「アサド政権に明確なメッセージを送った」と述べてさらなる化学兵器による攻撃を強くけん制。現時点では「1回限りの攻撃だ」と述べた。攻撃の成果は14日に明らかにすると説明した。
国防総省は化学兵器攻撃はアサド政権が実施したと断定したが明確な証拠は示さなかった。米国務省のナウアート報道官は13日午後の記者会見で、シリアでの化学兵器の使用疑惑に関して「(アサド大統領の)シリア政府に責任がある」と批判。米政府の独自情報をもとに「かなり高い確信がある」と強調。使われた化学兵器の詳細の特定などを進めていると説明していた。
アサド政権を支持するロシアやイランが反発を強めるのは必至だ。トランプ氏は13日夜の演説で「イラン、ロシアよ。どんな国が無実の男性や女性、子どもの大量殺害に加担したいと思うか」とアサド政権を支援していることを批判した。「いつかロシアやイランと仲良くやっていきたいと思うが、それはないかもしれない」と語った。
現時点でシリアに駐留するロシア軍や市民に被害が及んでいるのかは明らかになっていない。国防総省は、ロシア側とは事前に攻撃の内容やタイミングで「協調していない」と説明した。一方で「攻撃対象はとても精査した」とも説明。ロシアやイランに被害が及び、米ロの軍事面での対立が激しくならないようにする配慮がにじんだ。