フェイスブックCEO「私の過ち」 米議会で謝罪
情報流出・偽ニュース巡り証言
【ワシントン=中西豊紀、シリコンバレー=白石武志】米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、偽ニュースのまん延や個人情報の不正流出問題にからみ米上院の委員会で証言した。スーツにネクタイ姿で臨んだ同氏は冒頭で「(サイトの)悪用について十分な手を打てていなかった」と説明。そのうえで「私の過ちだ。申し訳ない」と謝罪した。
米上院の司法委員会と商業科学運輸委員会が合同で開催した公聴会に出席した。おなじみのTシャツとジーンズ姿を封印した同氏は冒頭から低姿勢で謝罪のコメントを繰り返した。そのうえで「この会社を始めたのは私で、私が運営してきた。ここで起きていることの責任は私にある」と述べた。
データ流出に批判
公聴会の冒頭は、英データ分析会社による8700万人分に上るユーザー情報の不正流用問題に議員らの関心が集中した。
進行役を務めた司法委のチャック・グラスリー委員長(共和党)は「データ収集による成長と技術革新の可能性は無限だが、悪用の可能性も大きい」と指摘。商業科学運輸委のジョン・スーン委員長(共和党)も「フェイスブックは多くの意味でアメリカンドリームを体現しているが、夢が悪夢にならないようにする義務がある」と注文を付けた。
リンゼー・グラム上院議員(共和党)はフェイスブックの利用規約の分厚いコピーを持ち上げながら「平均的なユーザーは自分がどんなサービスに申し込んでいるのか理解していると思うか」と疑問を呈した。ザッカーバーグ氏は「平均的なユーザーがその文書全体を読むとは思わない」としつつ、「私たちがそれを伝える様々な方法があると思う」と回答した。
情報保護を不安視
データ流出の遠因となった甘いプライバシー保護の姿勢を問いただす質問も相次いだ。「フェイスブックはユーザーの個人情報を自社のものと考えているのか」(ビル・ネルソン上院議員、民主党)との問いに、ザッカーバーグ氏は「違います」と即答。「私たちの利用規約の最初の行で、ユーザーはフェイスブック上に置く情報をコントロールできると記している」と説明した。
ネット大手によるデータの独占やプライバシー侵害を以前から問題視していた欧州では「一般データ保護規則(GDPR)」と呼ぶ新ルールが5月に導入され規制が強化される。「欧州の規制は米国でも適用されるべきだと思うか」(マリア・キャントウェル上院議員、民主党)との問いにザッカーバーグ氏は「世界中の誰もがよりよいプライバシー保護を受けるべきだと思う」と肯定的な姿勢を示した。
中立性に懸念も
フェイスブック上でまん延した偽ニュースが16年の米大統領選などで有権者の投票行為に影響した対策として、フェイスブックは政治的広告の事前審査を強化する方針を示している。
ただ、ルールの運用次第では特定の思想が閉め出される可能性も指摘されている。「フェイスブックは中立的なのか」とのテッド・クルーズ上院議員(共和党)の質問に、ザッカーバーグ氏は「全てのアイデアのためのプラットフォームだ」と答え、懸念の払拭に努めた。
ザッカーバーグ氏はほぼ全ての質問に手元のメモに目を落とすことなく自らの言葉で回答した。真摯な姿勢でこれまでに発表した自主的な不正対策への理解を求めたが、ネルソン上院議員は「フェイスブックや他のオンライン企業がプライバシー侵害の問題を解決できないのならば、我々がその役割を果たす」とも述べた。
ワシントンではすっかりヒール(悪役)のイメージが定着したフェイスブックによる釈明を一目見ようと、公聴会の開始前には傍聴席を求めて100人以上が列を作った。会場の外では「フェイスブックを削除しよう」とのプラカードを掲げ、個人情報を基盤に広告事業で稼ぐフェイスブックの事業モデルに抗議する人々の姿も目立った。
メタ(旧Facebook)の最新ニュースや解説をまとめました。メタバースやVR端末などの新サービス・商品、決算などの情報を読めます。