米、シリア軍事行動示唆 トランプ氏「まもなく決断」
【ワシントン=中村亮、ニューヨーク=高橋里奈】トランプ米大統領は9日午後(日本時間10日午前)、安全保障担当者との会合で、シリアのアサド政権による化学兵器の使用疑惑への対応に関して「今夜またはまもなく決断する」と述べ、9日中にも軍事行動の是非を判断する考えを示した。「軍事面で多くの選択肢がある」とも指摘。アサド政権への軍事行動の可能性をちらつかせた。
同日、フランスのマクロン大統領と電話協議し「アサド政権による化学兵器の残虐な使用への対応で引き続き協調する」ことで一致した。
トランプ氏はこれに先立つ同日の閣議でも、アサド政権に対し「24時間から48時間以内に大きな決断をする」と言及。軍事行動も辞さない構えを見せていた。化学兵器の使用を「野蛮な攻撃だ」と批判し「とても入念に調べている」と説明。化学兵器の使用疑惑は「人道に関する問題で、このようなことが起きるのを許してはならない」と強調した。トランプ氏は2017年4月、アサド政権が戦闘で化学兵器を使った報復措置として、シリアの空軍基地を巡航ミサイルで攻撃している。
サンダース大統領報道官も9日の記者会見で「ロシアはアサド政権による化学兵器の使用を止める義務を果たしていないのは明らかだ」と批判。「我々は国際社会と攻撃に関する情報を共有し、犯人やその支援者に責任を負わせるよう呼びかける」と強調した。攻撃があったシリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区は政権軍に包囲されているとして「医療支援などのために早期の解放が必要だ」と訴えた。
国連安全保障理事会も9日、シリアの化学兵器使用疑惑を巡り緊急会合を開いた。アサド政権への対応を巡り、米ロが非難の応酬を繰り広げた。米国のヘイリー国連大使は「米国は化学兵器を落とした怪物に責任をとらせると決心した」と述べ、シリアへの報復を示唆した。ロシアがアサド政権を支援しているとして「ロシアの手はシリアの子供の血で覆われている」と強く非難。安保理ではロシアの拒否権で化学兵器使用の調査機関の存続が断たれたことなどを挙げ、「米国は対応する」と単独行動も辞さない構えを示した。
一方でロシアのネベンジャ国連大使は「地元住民誰一人として化学兵器による攻撃があったと確認していない。病院でも塩素ガスのような有毒物質による症状があったとの報告はない」と述べ、化学兵器が使われた証拠はないと主張した。シリアとともに化学兵器禁止機関(OPCW)の調査を受け入れる用意もあるとの姿勢も示した。
安保理は化学兵器の使用について、国連の独立した調査機関の設立に関する決議案の採決を模索している。早ければ10日にも採決する。だがロシアとの調整が難航する可能性もあり、採択に至るかは不透明だ。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。