シリア反体制派、撤退開始か 首都近郊陥落へ
【イスタンブール=佐野彰洋】国営シリア・アラブ通信は2日、首都ダマスカス近郊の反体制派地域、東グータ地区から最後まで抵抗していた反体制派「イスラム軍」が撤退を開始したと報じた。イスラム軍側は確認していないが、同地区の陥落とアサド政権側による完全制圧は確実な情勢とみられる。政権は内戦での優位を一段と固める一方、反体制派には大きな打撃となる。
東グータは首都周辺に残る最後の主要な反体制派拠点だった。2011年に始まった内戦の早い段階で反体制派が制圧し、首都へのロケット弾攻撃などで政権側にとって脅威となっていた。
政権側は18年2月中旬から奪還に向けた猛攻を開始した。シリア人権監視団(英国)によると、無差別な空爆や砲撃によってこの間に1600人を超える民間人が犠牲になった。
既に政権側が地区の95%を制圧。イスラム軍以外の反体制派は政権の後ろ盾であるロシア軍との交渉に応じ、戦闘を停止して地区外への移送を受け入れていた。
シリア・アラブ通信によると、地区最大の町ドゥーマからバスで退去したイスラム軍の戦闘員と家族はシリア北部ジャラブルスに移送されるという。
シリアの反体制派にとって、東グータの陥落は16年12月の北部アレッポ陥落に続く重要拠点の喪失を意味する。残る拠点は北西部イドリブや南部ダルアーに限られ、失地回復は難しい。
いずれも政権側の攻撃にさらされており、今後は補給の遮断と無差別な空爆という東グータ同様の制圧作戦が繰り返される恐れがある。
国連推計で約40万人とされた東グータ住民のうち、10万人以上が地区外に逃れたもようだ。国連安全保障理事会は18年2月、シリア全土での停戦決議を採択したが、反体制派は決議対象外のテロリストにあたるとしてアサド政権軍や傘下の民兵組織は攻撃を続けていた。