ボクシング・山中竜が初防衛 京口との統一戦視野
世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級王者の山中竜也(真正)が18日、モイセス・カジェロス(メキシコ)との初防衛戦で8回終了TKO勝ちした。序盤の強打で相手の出はなをくじき、勝負どころと踏んでいた9回以降に持ち込む前に白旗を揚げさせる完勝だった。
会場の神戸ポートピアホテルがある神戸市は所属ジムの所在地でもある。地元での一戦に向け、山中は「前半は距離を取り、余計なパンチをもらわない」というプランを持っていた。それだけカジェロスの前のめりな姿勢を警戒していたわけだが、蓋を開けてみると、相手の出足が鈍い。2回に強烈な右アッパーで鼻血を出させると「急に苦しそうにしていた」と山中。
早々に主導権を握って迎えた8回、ボディーブローの連打など容赦なくパンチを打ち込む。「山中有利」の印象を強くしてこの回が終わった直後、相手が棄権を申し出た。
「9ラウンド目からまとめようと思っていた」というジムの山下正人会長は肩すかしを食った気分。初防衛の喜びの度合いを聞かれた山中は「ちょっとですね」。TKOとはいえ、ダウンもレフェリーストップもなかったことで「仕留めきれず」の念を禁じ得なかったのだろう。ただ、審判の採点は3人全員が山中に軍配を上げ、うち2人は全ラウンドで山中を「優勢」とした。十分に胸を張っていい。
大阪府出身の22歳。小学6年でボクシングを始め、中学生の時に真正ジムに入門した。3階級制覇を果たしたジムの英雄、長谷川穂積に憧れて背中を追い続け、昨年8月、初の世界戦で福原辰弥から王座を奪取。この試合で左眼窩底(がんかてい)を骨折したが、スパーリングができない間は体幹トレーニングで来るべき試合に備えてきた。
初防衛戦の日は、同じジムの小西伶弥の世界ボクシング協会(WBA)ライトフライ級王座決定戦も組まれた。日ごろ練習を見てもらっている江藤日出典トレーナーが小西のサポートに専念することになり、山中は今回、初めて山下会長とコンビを組んだ。相棒が変わってもきっちり結果を出したことで、多少の環境の変化では心が揺らがないと自信を得たはずだ。
現在の階級で防衛を続けた先に、同じミニマム級で国際ボクシング連盟(IBF)王者の京口紘人との統一戦を見据える。「お互いに防衛を重ねていって、どっちも強いチャンピオンと認められてからやりたい」と山中。注目の日本勢対決の実現へ、自らの手で機を熟させていくつもりだ。
(合六謙二)