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有翼の起業家 後進へ啓示

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リスクを取って私財をスタートアップ企業に投じるエンジェル(個人投資家)。起業のエコシステム(生態系)を構成する重要な要素だ。日本でも起業経験者がエンジェルになって後進を支援する動きが広がってきた。

「壁打ちの相手になります」。交流サイトを通じて起業家にこう呼びかけているエンジェルがいる。習い事仲介サイトを運営するコーチ・ユナイテッドの創業者、有安伸宏氏(36)だ。有安氏は2013年に自社を売却した後、エンジェルとして活動している。

壁打ちとは、テニスの練習方法の1つで、壁に向かってボールを打つこと。起業家が打ってきた「悩み」というボールに「答え」という返球を出す意味を込めている。

買収提案に応じるか、自主独立でIPOをめざすべきか――。17年春、有安氏にこんなボールが飛んできた。打ち込んできたのは決済サービスのカンム(東京・港)の八巻渉社長(32)だ。

自主独立を助言

有安氏はIPOとM&A(合併・買収)の長所・短所を説明、八巻社長はIPOを目指すことにした。有安氏は成長戦略の説明方法を伝えた。八巻社長は資料を作り直し、ネット広告のフリークアウト・ホールディングスから4億円を得た。

日本経済新聞がエンジェル19人に行ったアンケートでエンジェルになった理由を複数回答で尋ねたところ「自分の知識や経験を生かして社会貢献ができる」が84%で最も多かった。「後輩の起業家を育てたい」と答えたエンジェルも79%いた。

投資対象とする起業家の条件でもこうした傾向が強く表れている。

エンジェルが投資判断で最も重視している要素を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「市場の成長性」(68%)や「プロダクト・技術力」(42%)ではなく「経営者の人間性」(90%)だった。

「すぐに投資を決めてくれた」。献立作成アプリ「タベリー」運営の10X(テンエックス、東京・中央)の矢本真丈社長(30)は創業して2カ月後の17年9月にエンジェルの赤坂優氏(34)と会った日をこう振り返る。

赤坂氏は婚活アプリ「ペアーズ」を運営するエウレカ(東京・港)の創業者だ。15年に株式を売却した資金を元手にエンジェル投資を始めた。

「次の資金調達がしやすくなるように株価はあまり高くし過ぎない方がいい」「最初から広報に力を入れるべきだ」

赤坂氏からの助言を受けた矢本社長は12月に6人のエンジェルから5600万円を調達、タベリーのサービスを始めた。

10Xの矢本社長はベンチャーキャピタル(VC)から出資の提案を受けたことがあるが、断った。「ビジネスの修羅場を経験しているエンジェルに株主になってほしい」と考えたからだ。元ミクシィ社長でエンジェルでもある朝倉祐介氏(35)は「エンジェルは上場後も継続して支援できるのが強み」と指摘する。

個人がスタートアップに投資するときに税負担が軽くなる「エンジェル税制」の適用額は、16年度に約34億円で、5年前の約3倍に膨らんだ。エンジェルによる投資額は100億円前後との見方もある。VCによる年間投資額(約1500億円)と比べれば少ないが、風向きは変わっている。

背景にあるのは資金回収機会の増加。年間のIPO社数が80~90社という高水準で推移、大企業によるスタートアップの買収も増えている。多額の資金を手にした起業家がエンジェルになるという道筋がつきつつある。

アンケートでも、エンジェルたちの投資資金の原資で最も多かったのが「IPOによる売却資金」の47%だった。「M&Aによる売却資金」の32%がこれに続いた。

経営幹部として働きながらエンジェル投資をしている人たちもいる。フリークアウトの取締役の佐藤裕介氏(33)はその1人だ。「兼業型エンジェル」の佐藤氏がエンジェル投資をするのは「新規事業のヒントを得られるから」だ。人工知能(AI)やフィンテックなど「旬のテーマに沿った企業に投資している」。

クラウドファンディングのキャンプファイヤー(東京・渋谷)の家入一真社長(39)も兼業型エンジェルの1人だ。家入氏はエンジェル投資を「自分の知らない世界を垣間見るための参加費」と表現する。

外部資金の呼び込み役にも

起業先進地の米国シリコンバレーのように、元起業家や現起業家がエンジェルになって後進を支援する流れが日本でもできつつある。ただ「企業の実態と比べて割高になっている投資案件が増えている」との声があがっている。

06年に求人情報サービスのリブセンスを起業した村上太一社長(31)は「お金がない中で経営者が創意工夫するハングリー精神が薄れないか」と心配する。資金や経営のノウハウだけでなく、事業を成功させる意気込みもエンジェルは伝える必要がある。

もう1つの課題はエンジェル投資の1社あたりの投資額の少なさだ。投資から回収までに5~10年かかることが多く、1社あたりの投資額は数百万円~数千万円と小さい。日本経済新聞のアンケートでも1社あたりの投資額で最も多かったのが「1000万~2000万円」の42%だった。億円単位の資金を求める企業にとっては力不足の感は否めない。

こうした中、目利き力に優れたエンジェルが外部から資金を集める動きも出てきた。コロプラ元副社長の千葉功太郎氏(43)が17年に設立した総額約16億円の「ドローンファンド」がその先駆けだ。三井化学や日本ユニシスといった大企業のほか、中小企業基盤整備機構も5億円を出資した。

中小機構はこれまでVCが運営するファンドに出資してきたが、エンジェルが立ち上げたファンドに出資するのは初めてだ。中小機構の田所創理事は「成功した起業家がエンジェルになる動きを加速し、リスクマネーの供給を拡大する」と出資の狙いを説明する。

多額の資金を一度に提供できる機関投資家の長所と、親身になって起業家と接する立場にいるエンジェルの利点。当面は両者の「いいとこ取り」が現実解となりそうだ。

ベテランエンジェル負けじ

40代以上のベテランエンジェルも健在だ。豊富な経営経験を生かし、マイペースで投資を続けている。

「エンジェルはライフワーク」と語るのはUSEN-NEXT HOLDINGS島田亨副社長(53)だ。共同創業した人材サービス会社のインテリジェンスが2000年にIPOした。島田氏はインテリジェンス株を現金にして副社長を退任した。売却で得た資金の3分の1は社会に還元しようと決めたという。

リターンはあまり気にせず、対話を通じた起業家の育成に取り組む。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)や、音声翻訳機を開発するログバー(東京・渋谷)など75社以上に投資する。00年代前半に投資した、廃棄物再資源のリファインバースは、16年にIPOした。

ディー・エヌ・エー共同創業者の川田尚吾氏(49)がエンジェル投資を始めたのは、リーマン・ショックがあった08年。学生時代に起業したときに資金調達に苦労した経験から「この国に圧倒的に足りないのは資本家」と以前から感じていた。実際、エンジェル投資を始めた08年には、創業間もないスタートアップに出資する独立系VCはほとんどなかった。

「プロダクト(製品・サービス)をつくる能力」を重視し、これまでに約30社に投資した。事業の成長に応じて追加出資もする。フリークアウトとウォンテッドリー、はてなの3社がIPOを果たした。ほかにもニュースアプリ運営のスマートニュース(東京・渋谷)、画像共有ツールのNOTA(京都市)など多くの成長株を抱える。

「鼻折ってやる」

運用会社レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長(51)はファンドマネジャー業の傍ら、飲料水宅配のプレミアムウォーターホールディングスを共同創業してIPOさせた経験を持つ。これまでに7000人の経営者と会ってきたが、「本当に好きなのはスタートアップ」と打ち明ける。

生鮮品のネット流通を手がける八面六臂(はちめんろっぴ、東京・中央)などに投資した。「起業家は自信過剰な人が多い。『まぐれで成功しただけ』と鼻を折りにいくのが僕の役割」と言う。AIを活用したサービスを開発するHEROZ(東京・港)は2年半前、監査法人主催の上場セミナーで出会った。「資金繰りが厳しいので助けてほしい」と頼まれ出資した。同社は4月20日に東証マザーズに上場する予定だ。

(企業報道部 鈴木健二朗)

[日経産業新聞 2018年3月29日付]

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