森友文書改ざん 財務省側、刑事責任問われる恐れ
学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書改ざん問題は27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われ、今後は大阪地検特捜部による捜査の行方に焦点が移る。改ざんを巡って佐川氏らに対する告発状も出ており、財務省側の刑事責任が問われる可能性もある。
「既存の公文書を改ざんする行為は刑法違反と認められる恐れがある」。明治大法科大学院の大塚裕史教授(刑法)は適用される可能性がある罪名として、虚偽公文書作成罪と公文書偽造・変造罪、公用文書等毀棄罪の3つを挙げる。
虚偽公文書作成罪は文書の作成権限がある職員が嘘の文書を作る行為を想定。権限がない職員が作成した場合は公文書偽造・変造罪に当たる可能性がある。権限にかかわらず、文書を破ったり記載を削除したりすると公用文書等毀棄罪に問われかねない。
過去にも公文書の改ざんが刑事事件に発展した例はある。1999年に埼玉県桶川市で発生した女子大生殺害事件では、被害者からの告訴を受理していなかったように装うため、当時の警察官が供述調書の「告訴」を「届出」と改ざん。警察官らは虚偽有印公文書作成などの罪に問われ、有罪判決を受けた。
今回発覚した決裁文書の改ざんは、原本から削除された部分が目立つ。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「重大な事実関係が削除された場合は、虚偽の文書が作成されたとみなされる。改ざんに関わった職員の認識が重要なポイントだ」と指摘する。
特捜部は、一連の問題の発端となった国有地の売却交渉の記録を廃棄したとして、佐川氏らに対する公用文書等毀棄容疑での告発を受理。決裁文書改ざんの発覚後、市民団体から虚偽公文書作成容疑での告発状も提出されており、改ざん行為についての捜査も進められるとみられる。
ある検察幹部は「改ざんの実行行為者や権限の特定、動機など、調べなければならない事項は多い」と話す。改ざん前後の文書の違いを分析し、立件の可否を慎重に判断するとみられるが、「文書の大部分は残っており、削除したことで虚偽の内容に変えたとまでは評価できない」(元検事の亀井正貴弁護士)との見方もある。