福井市はバブル期以来の上昇 新幹線延伸控え開発進む
点検・北陸地価(上)
バブル期以来、26年ぶりに商業地の地価が上昇した福井市。5年後に新幹線開業が予定されるJR福井駅前では、2016年4月に駅西口の再開発ビル「ハピリン」が開業して以降、新規の出店や再開発計画、集客イベントが相次ぐ。
個人が駅前取得
「個人が福井駅前の小区画の土地を買い進める動きが出てきた」。同市の第三セクター、まちづくり福井の岩崎正夫社長は語る。同社の調査によると、駅前では17年4月から18年3月15日までに飲食を中心とする21店が新たに開業した。中央1丁目地区では1階部分の空き店舗の割合が11.3%と、過去15年で最低水準となった。
福井駅前の商業施設などでつくる一般社団法人「EKIMAE MALL(エキマエモール)」の月刊フリーペーパーは新店紹介のページを17年から設けた。竹本祐司代表理事は「大手チェーン店、個人店、専門店でエリアのすみ分けができてきた」と話す。
もっとも、福井県全体でみれば改善の足取りはなお鈍い。東京圏、大阪圏、名古屋圏を除く地方圏の商業地はプラス0.5%、住宅地はマイナス0.1%。福井県はこれを下回る。
新幹線効果に支えられ北陸3県で「一人勝ち」とされる金沢市。JR金沢駅や市中心部では20年までに10棟以上のホテル建設が進む見通しだ。「月1~2件はマンションの1棟買いやホテル用地の問い合わせが来る」と不動産会社のクラスコ(同市)の担当者は語る。
だが、金沢市の商業地の上昇率は3.2%と3年ぶりに三大都市圏の上昇率を下回った。石川県全体では地方圏(0.5%)を上回る上昇が続くが、地方圏との差は0.2ポイントと16年の2.1ポイントから縮んでいる。
同市ではホテルの開発が相次ぎ、客室数は17年3月末時点の名古屋市内を上回る見込みだ。過当競争の懸念も拡大。「ホテル用地の需要に警戒感が出ており、一部で買った土地やホテルを転売する動きもある」(不動産鑑定士の武田昭男氏)という。
物件に過剰感も
富山市ではホテルや商業施設で建設中の案件が計3件にとどまる。富山駅周辺は上昇鈍化が鮮明だ。市中心部では6件のマンション建設計画が進むが「全マンションが完成すれば新規案件が頭打ちになり、供給過剰で一服感が強まりそう」と不動産関係者は指摘する。
高岡市の商業地は下落傾向に歯止めがかからず、下落率は0.7%と0.1ポイント拡大した。新幹線の新高岡駅周辺は横ばいだが、在来線の高岡駅前の商店街周辺はマイナス2.8%となった。休日の日中でもシャッターを下ろす店舗が目立つ。
JR西日本は新高岡駅について、17年12月から北陸新幹線「かがやき」の平日の停車を取りやめた。駅周辺の集客力の弱さと乗降客の伸び悩みが相まって、新幹線効果を薄めるといった悪循環も目立ってきた。