英グラクソ 大衆薬買収 1.3兆円、ノバルティスから
【ロンドン=篠崎健太】英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は27日、欧州同業最大手ノバルティス(スイス)から一般用医薬品(大衆薬)の合弁事業を買収し完全子会社にすると発表した。株式の36.5%を130億ドル(約1兆3700億円)で取得する。大衆薬に集中する姿勢を鮮明にすると同時に、価格競争に規模の拡大で対応する。
買収はGSKの株主総会での承認や当局の認可を経て、4~6月期にも完了する見通し。取得費用は現金で支払う。
両社は2015年に大規模な事業交換を行い、それぞれ戦略分野への集中を進めてきた。ノバルティスは抗がん剤の製品群をGSKから獲得する一方で、ワクチン事業を譲渡。大衆薬事業は合弁に切り替え、GSKに主導権を渡していた。ノバルティスは医療用医薬品に経営資源を集約する。
GSKは今回の買収で、処方箋がいらない風邪薬など大衆薬ビジネスの地盤を固める。エマ・ウォルムズリー最高経営責任者(CEO)は声明で、完全子会社化により「研究開発(R&D)など優先課題への自由度が高まる」とコメントした。
同日、買収資金を手当てするため、麦芽飲料「ホーリックス」など栄養補助食品事業の見直しに着手したことを明らかにした。同製品群を手掛ける、インド株式市場に上場する子会社売却を視野に入れている。18年末までに判断するという。
世界では大衆薬の再編が加速している。知名度向上へ広告費がかかり、医療用医薬品などとの競争が激しい大衆薬を切り離す動きが出ている。17年10月には米ファイザーがコンシューマー・ヘルスケア部門の切り離しを検討していると発表。GSKも買い手として浮上したが23日までに買収から撤退すると表明した。
GSKの17年の大衆薬事業の売上高は78億ポンド(1兆2千億円)。医療用医薬品の173億ポンドに次ぎ、全体の26%を占める。大衆薬事業の成長率は前年比8%で、医療用を1ポイント上回った。
サプリメントなどを含む大衆薬の世界市場規模は英調査会社のユーロモニターによると17年で約25兆円。GSK、米ジョンソン・エンド・ジョンソンなど大手の売上高は約1兆円で、国内最大手の大正製薬ホールディングスの約5倍だ。
武田薬品工業など医療用を中心に手がけるメーカーにとっても連結売上高の数%を稼ぐにとどまり、企業イメージや知名度の向上に寄与しているが収益貢献は限定的だ。
ウォルムズリーCEOの出身母体でもある大衆薬事業はGSKにとって特別な意味がある。17年に17.7%だった同事業の売上高営業利益率を、22年までに20%台半ばに引き上げる目標を掲げており、日本市場で攻勢に出る可能性もある。
米国ではアマゾン・ドット・コムなどネット通販の台頭がドラッグストアの再編を促した側面もある。規模を巡り、医薬品メーカーの戦略にも影響を与えかねないとの指摘もある。国内各社がこれらの影響をどうしのぐのかが焦点になる。
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