自民・岸田氏、財政再建「もう少し真剣に」
【香港=江渕智弘】自民党の岸田文雄政調会長は21日、香港で投資家らに講演した。財政再建について「今の日本の状況を考えるともう少し真剣に取り組む必要がある」と語った。日銀の金融緩和は「いつまでも続けることは難しい。出口の時期を考えることが大事だ」と指摘した。9月の党総裁選をにらみ、財政出動や金融緩和に軸足を置く安倍晋三首相との違いを示した。
「新たな財政健全化計画を作る夏までに歳出を真剣に検討しなければならない。将来的には歳入もしっかり考えないといけない」と述べた。2019年10月の10%への消費増税は「当然考えなければならない」と語り、予定どおり実施すべきだという考えを示した。
国民が将来に対して抱く不安のうち「最も大きなものは財政と少子高齢化だ」と指摘した。財政再建の見通しがないままでは「賃金が上がっても思いきって消費をしないし機動的な経済政策もしにくい」と訴えた。経済再生とのバランスが重要だとしながらも「もう少し財政再建を強調する必要がある」と話した。
異次元の金融緩和については「中小金融機関の苦しい状況や景気循環を考えるといつまでも続けられないと考える人が多い」と述べた。出口の時期や手法を欧米を参考に考えるべきだと語った。
党内の一部には首相の経済政策に「目先しか考えていない」との不満もある。岸田氏が自身の政策を語る際のキーワードは「持続可能性」や「2020年以降」と対照的。中長期の課題に向き合う姿勢を示すことで独自色を出す狙いがある。
総裁選は「誰をリーダーとしてどんな体制で来年を迎えるか考える貴重な機会」と述べた。自身が立候補するかどうかは語らなかった。
日中関係については互いの国民感情の悪さに懸念を示した。「市民レベルの交流の重要性を改めて感じる」と話した。
クレディ・スイスが開いた「アジア投資会議」で講演した。昨年8月の政調会長就任以来、初めての海外出張となる。
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