トランプ氏、週内にも対中制裁表明 知財侵害で高関税
【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は中国の知的財産権侵害を巡り、中国製品の関税引き上げなどの制裁措置を週内にも表明する見通しだ。米メディアが20日に一斉に報じた。高関税を課す対象製品は最大600億ドル(約6兆4千億円)に達し、中国企業の対米投資も大幅に制限する可能性がある。23日には鉄鋼・アルミニウムの輸入制限も発動する計画で、米通商政策は一段と強硬さを増している。
トランプ政権が検討するのは、不公正な貿易慣行に大統領権限で制裁措置を課せる「通商法301条」の発動だ。米通商代表部(USTR)は既に中国の貿易慣行の調査を進めており、不法コピー商品の横行などの知財侵害に加え、米企業が中国進出時に技術移転を求められる同国内の投資慣行も問題視している。
トランプ政権は制裁措置として(1)幅広い中国製品の関税引き上げ(2)中国企業の対米投資の制限(3)中国関係者のビザ発給の制限――を検討している。関税引き上げの対象は電機や通信機器だけでなく、衣料品や玩具など100品目を超え、300億~600億ドルに達する可能性があるという。
通商法301条には制裁発動前に相手国と2国間協議する仕組みもある。トランプ政権がいきなり関税引き上げに踏み切るのか、あるいは制裁発動をちらつかせて中国と事前協議に乗り出すのかは見通せていない。
中国の知財侵害は日米欧が強く問題視してきた。ただ、米大統領の権限で一方的に貿易制限を課す通商法301条は、制裁措置が極めて強力で世界貿易機関(WTO)ルールに抵触する可能性も高い。米政権が発動を正式に決めれば、中国の反発は必至だ。中国が報復措置に出る可能性もあり、大国間の貿易摩擦は世界経済の深刻な懸念材料となる。