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宇宙満たす未知の暗黒物質、有力候補探索が本格化

日経サイエンス

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宇宙には正体不明の「暗黒物質」が膨大な量、存在することが天文観測から分かっている。普通の物質とほとんど相互作用しないので、幽霊のようにどんなものでも素通りしてしまうが、質量は持っているので、寄り集まると強大な重力を周囲に及ぼし、星々の運動に大きな影響を与えている。

暗黒物質は何らかの未知の粒子である可能性が高い。素粒子物理学では理論研究から存在が予言されながら、実験や観測で見つかっていない粒子がいくつもあり、その中の1つが暗黒物質なのではないかと考えられている。

最有力視されているのは「WIMP(ウィンプ)」という重い原子ほどの質量を持つ粒子だ。ただ、これまで長い間、世界各地の大学や研究機関が探索を試みているが、その兆候すら捉えられていない。そこで別種の粒子の探索も本格化しつつある。「アクシオン」という粒子だ。アクシオンの質量は原子の1兆分の1よりもさらに軽く、もしアクシオンが暗黒物質だとしたら、私たちの身の回りの空間1立方センチメートル当たり少なくとも10兆個は漂っていると考えられている。

アクシオン探索で世界をリードしているのは、米シアトルにあるワシントン大学のレスリー・ローゼンバーグ教授らが取り組んでいるADMX実験だ。実験装置の中心部は内部を真空にした円筒容器。容器内部は非常に強い磁場で満たされており、ここにたまたまアクシオンが入ってくると、時に磁場の作用でアクシオンがマイクロ波という電波の一種に変わると考えられる。このマイクロ波を捉える。

問題はマイクロ波が非常に微弱なことだ。ADMX実験では超高感度のマイクロ波検出器として、量子力学の効果を利用した最先端の「超電導量子干渉素子(SQUID)」を用いている。ただ実験装置の仕組みは簡単に説明できても、実際に超高感度を実現するのは並大抵のことではできない。ローゼンバーグ教授は20年以上、検出技術を着実に発展させながらADMX実験に取り組み、ようやくアクシオンを本格的に探索できる段階にたどり着いた。暗黒物質になりうるアクシオンが実在するのかどうか、それほど遠くない将来、判明する可能性がありそうだ。

(詳細は3月24日発売の日経サイエンス2018年5月号に掲載)

日経サイエンス2018年5月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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