JEITAベンチャー賞に音声認識技術のHmcomm
電子情報技術産業協会(JEITA)は14日、電機・IT(情報技術)分野の有望なスタートアップ企業を表彰する「JEITAベンチャー賞」を発表した。人工知能(AI)による音声認識技術開発のHmcomm(エイチエムコム、東京・港、三本幸司社長)やセキュリティー技術開発のZenmuTech(ゼンムテック、東京・品川、田口善一社長)など、合計6社が受賞した。
「方言や外国語も正確に認識できるようになる」。この日、エイチエムコムの三本社長は年内の実用化を目指して開発している新技術についてこう語った。音の波形を画像で捉えることで、聞き取るのが難しい音声でも対応できるという。
エイチエムコムは2012年の設立。独立行政法人の産業技術総合研究所で開発された音声認識技術を実用化することを目的にしている。「AIで音を可視化する」というキャッチフレーズを掲げ、コールセンターでのやりとりを自動的に文字に変換してデータとして蓄積できるようにした。すでに不動産会社などで使われている。
コールセンターでは、電話でのやり取りをデータベースにするとき、音声を従業員が聞き直してキーボードで入力している。エイチエムコムの技術を使えば、こうした業務の省人・無人化につながる。
エイチエムコムの技術は車両や機械設備の異音を検知して故障の予知・予防に活用される可能性もある。音声データを活用した新たなビジネスを生み出せる点がJEITAに評価された。
JEITAベンチャー賞は16年開始で、今回が3回目となる。16年はAI開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)が受賞した。
表彰制度には、JEITAに加入する大手電機・IT企業約400社がスタートアップと協業するきっかけにする狙いもある。ただ、17年までの受賞企業15社のうち、JEITAに入会したのは6社にとどまっている。JEITAの幹部は「今後はスタートとアップと会員企業との交流会を催すなど、協業を促す仕組みをつくっていく」と話している。
JEITAの長栄周作会長(パナソニック会長)もこの日の表彰式で「(ITを活用してムダを減らす)超スマート社会『ソサエティー5.0』を進めるには(スタートアップとの)共創が必要だ」と述べた。10月開催予定の家電・IT見本市「CEATEC(シーテック)」では、スタートアップと大手企業、大学、投資家が交流する場を設ける考えを示した。
(企業報道部 池下祐磨)
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