米大統領、国務長官を解任 後任にCIA長官
【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は13日、レックス・ティラーソン国務長官(65)を解任し、後任にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官(54)をあてると発表した。米外交の中核を担う国務長官が就任から1年余りで交代するのは異例。ポンペオ氏は国務長官として強硬な外交政策を推進する可能性があり、金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談を調整するなか、対北朝鮮政策にも影響するのは必至だ。
ポンペオ氏は議会上院の承認を経て、正式に就任する運びだ。後任のCIA長官にはジーナ・ハスペル同副長官をあてる。承認されれば、CIA初の女性長官となる。
「(ティラーソン氏とは)イラン核合意など多くのことで意見が違った。ポンペオ氏は思考回路が似ている」。トランプ氏は13日、ホワイトハウスで記者団の前に現れ、更迭理由を語った。米朝首脳会談に関して「ティラーソン氏とはほとんど議論していない。自分で決断した」とも述べた。米政府高官は「北朝鮮との対話や様々な貿易交渉を控え、大統領はチームの一新を求めた」と説明した。
米メディアによると、ティラーソン氏は9日に更迭の可能性を知らされ、アフリカ外遊を1日早く切り上げたという。米CNNテレビは「トランプ氏のツイッターで正式に更迭を知った」と伝えた。ゴールドスタイン国務次官は「ティラーソン氏はけさトランプ氏と話しておらず(解任の)理由はわからない」と異例の声明を出した。
一方、トランプ氏は声明で、ポンペオ氏を「極めて重要な状況でこの仕事にふさわしい人物だと自信を持っている」と称賛。ティラーソン氏にはツイッターで「ありがとう」と謝意を示した。
ティラーソン氏は石油メジャー最大手、エクソンモービルの最高経営責任者(CEO)を経て国務長官に就任した。だが、トランプ氏との確執が取り沙汰され、たびたび更迭論が浮上した。
「米国第一」を掲げて内向き志向のトランプ氏と国際協調を重んじるティラーソン氏は、主要な外交課題を巡りことごとく対立。対北朝鮮で軍事行動も辞さないトランプ氏と、対話解決を志向したティラーソン氏の溝は埋めがたかった。
ポンペオ氏は陸軍出身で、下院議員からCIA長官に転じた。CIAによる容疑者への拷問を容認。イスラム教徒への差別発言により批判を受けたこともある。
トランプ氏と接近してから日は浅いが、機密情報の説明などで信頼を得たという。ポンペオ氏は13日の声明で「世界で最も素晴らしい外交を担う集団を指揮し、大統領の外交政策を実行するのが楽しみだ」と表明した。
ティラーソン氏はマティス国防長官と気脈を通じ、北朝鮮問題の対話による解決をめざした。解任で政権内のパワーバランスが変わるのは確実。ポンペオ氏は本格的な外交経験に乏しく、北朝鮮との厳しい駆け引きでどこまで手腕を発揮できるかは不透明だ。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。