シリアの停戦困難、国連安保理 米は軍事行動示唆
【ニューヨーク=高橋里奈】国連安全保障理事会は12日、シリア内戦の人道支援を目的とした一時停戦決議が順守されていないことを巡り会合を開いた。安保理が2月24日に採択した決議は30日間の停戦を求めたが、ロシアを後ろ盾とするアサド政権は攻撃を継続。欧米を中心に理事国は停戦を順守するよう求め、米国のヘイリー国連大使は軍事行動も示唆した。
国連のグテレス事務総長は冒頭「一時停戦は守られておらず、(ダマスカス郊外の)東グータなどで暴力が続いている」と述べ、人道支援が困難な状況を報告した。特に反体制派の拠点である東グータに対する政権軍による空爆や地上戦は停戦決議の採択後も強化されていると指摘。包囲作戦も続いているという。
ロシアとシリアは決議が過激派組織「イスラム国」(IS)などのテロ組織を停戦の対象外としたことを口実に、東グータに「テロリストがいる」として攻撃を強めている。ヘイリー氏は「ロシアやシリア、イランは東グータ近隣はテロリストであふれかえっているとして、故意に交渉で作った抜け穴を悪用して市民を飢えさせ、打ちのめしている」と批判した。米国はテロ組織を停戦の対象外としない新たな決議案を配布した。
また、2017年4月にシリアの化学兵器使用疑惑を受けた米国のミサイル攻撃を挙げ「国際社会が失敗し続けるならば自国の行動をとる場合もある」と発言。「この警告をもう一度繰り返す」と述べ、軍事行動も辞さない構えを強調した。
ロシアのネベンジャ国連大使は即時停戦は「夢物語だ」とし、「テロの試みが一時停戦を損ない極度の緊張をもたらしている」と主張した。「シリア軍の対テロ作戦は停戦決議と矛盾しない」として攻撃を正当化した。
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