ギリギリまで勝負 練習だから100%を出す
この仕事をしていて、一番興奮するのが練習だ。練習はプレーの精度を上げるための時間だけれど、僕には、たくさんの気づきを与えてくれる場だ。常に「何を今すべきか」を考えている僕にとって、それを知るヒントは練習グラウンドにしかない。
練習の内容やそこでの指示で監督の思考に触れられる。同僚の状態やチームの変化の兆しを真っ先に知れるのも練習場だ。練習では常に何かが起きている。そういう現場にいられないのはもったいないから多少、体の状態が悪くても練習を休みたくない。
その日の自身のコンディションや課題と対峙し、テーマを決めて練習に臨む。「何も考えずに思いっきりプレーする」のも、「体調が悪いから細心の注意を払う」のもテーマになる。清水時代に右足を痛めたときには、左足だけでプレーしたこともあった。
とにかく、毎日100パーセントの力を尽くすことが重要だ。「練習だからこれくらいでいいや」ではなく、ギリギリまで勝負しているという実感を得たい。そういう挑戦をするから日々、達成感を抱けるし練習で興奮できる。それができなくなったら、サッカーをやめるときなんだと思う。
練習で、その日のすべてを出し切れないのならサッカーをやる意味はない。現役を退き、練習のない毎日を過ごす人生も想像できない。
そんな練習好きな僕が2月に膝を負傷し、チーム練習からの離脱を余儀なくされた。2日以上、練習を休むのは5年ぶりのことだった。
それを僕は前向きにとらえるように努めた。ずっと前から痛めていた足首の治療にも取り組めたし、ウインターブレイクのないプレミアリーグで、シーズン中に身体をリフレッシュできる機会を得られたと。リハビリも普段の練習と同様に「今日の限界に挑戦する」というスタンスをキープした。身体を動かさないと今、どれくらいできるのかを知ることができないからだ。そうやって回復具合を実感できるのは楽しい。
当初は戦列復帰まで2週間といわれていたが、全体練習に合流するまでに2週間もかかってしまった。しかし、重圧や焦りはない。きっと、今日と精いっぱい向き合っているからだと思う。
なかなか消えない痛みを感じながら、膝のケガの難しさも知った。そして「もっと悪化する可能性もあるんちゃう?」と選手生命を脅かすケガをしたときの自分をイメージした。そういう現実に直面しても立ち上がれる精神でいたいと思った。
ケガの経験の少ない僕は、今回初めてそんなことを考えた。もし、大ケガをしたら実際にどうなるかはわからないが、「あのとき、こういうこともイメージしたな」と思い出すだろう。そうすれば、悲壮感は薄れる気がする。
(レスター所属 岡崎慎司)