諫早干拓巡る訴訟、和解協議が決裂 7月に判決へ
福岡高裁
国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門を開門するまで制裁金を支払うよう命じた司法判断を巡り、支払いを強制しないよう国が求めた請求異議訴訟控訴審の和解協議が5日、福岡高裁(西井和徒裁判長)であった。高裁は開門しない前提の新たな和解の方向性を国側と漁業者側に勧告。漁業者側は受け入れず、和解は事実上決裂した。
高裁は4月4日までに正式に回答するよう双方に求めた。漁業者側は期限までに和解に応じないことを通知する。その場合、7月30日に判決が言い渡される。
高裁はこの日の協議で「開門は(干拓地の)営農者らの生活に多大な影響を与える」として、開門しないことを前提とした和解の方向性を提示。100億円の漁業振興基金で有明海再生を図るとする国側の和解案を念頭に「開門に代わる基金等の方策による全体的解決を図る」方向で協議を進めたい意向を示した。
これに対し、開門を求めてきた漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は、基金による和解案が過去に決裂している経緯に触れ「国側の主張の問題点を指摘したのに生かされていない」と批判。和解勧告を「到底受け入れることはできない」として、これ以上協議に応じない姿勢を示した。
一方、国側の農林水産省の担当者は「(勧告は)国が目指していた方向。最後まで和解に向け努力していく」と述べた。
福岡高裁では話し合いでの解決を目指す点では一致する国側と漁業者側が、和解協議入りすることで2月26日に合意。同高裁が3月5日に新たな方向性を示すとして、膠着状態を和解で打開できるかが注目されていた。
開門を巡っては、福岡高裁が国に開門を命じた判決が2010年に確定したが、13年には長崎地裁が開門差し止めを命じる仮処分決定を出し、相反する司法判断が並立する状況が続く。今回の請求異議訴訟の判決で国側の主張が認められれば、漁業者側に制裁金を支払う義務がなくなる可能性がある。