中国政府報告、香港の「高度な自治」触れず
強まる統制、台湾にも揺さぶり
【北京=伊原健作】中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は5日に行った政府活動報告で、例年盛り込まれてきた(香港に保障する)「高度な自治」という文言に言及しなかった。香港の統合進展への自信の表れとみられ、政治や社会などへの締め付けを一段と強める可能性がある。また台湾には揺さぶりを強める姿勢を鮮明にした。
中国は1997年の香港返還に伴い施行した「香港基本法」で、少なくとも50年間は資本主義や言論の自由などの「高度な自治」を保障すると定めた。李氏は報告で高度な自治を認めることを意味する「一国二制度」を維持すると言明。ただ「高度な自治」「港人治港」(香港人による香港統治)など、従来盛り込んでいた香港の独自性を強調する文言は消えた。
李氏は「(香港で)憲法と基本法の権威が一層はっきり表れた」と統治の成果を誇示し、「(香港が)国の発展の大局に溶け込むよう支援する」と一体感を強調。「香港独立派」をけん制する文言はなくなり、統合進展への自信をにじませた。
また、台湾について「台湾独立をもくろむいかなる分裂の画策や行動も許さない」と警戒感をあらわにした。従来の「両岸(中台)関係の平和発展を維持する」との文言は消え、統一を拒む台湾・蔡英文政権との溝を改めて浮き彫りにした。
一方、「台湾同胞が大陸(中国)で就学や就職、生活をするうえで、大陸同胞と同等の待遇を提供する」など融和策を促進すると強調。アメとムチを使い分けて蔡政権を揺さぶり、台湾を統一に引き寄せる構えだ。台湾で対中国大陸政策を担当する行政院(内閣)大陸委員会は「台湾の資源を吸収しようとしている」と警戒を強めている。
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