日欧EPA発効、投資分野切り離しを確認
【ブリュッセル=森本学】日本と欧州連合(EU)は28日、2019年はじめの発効を目指す経済連携協定(EPA)を巡って、ブリュッセルで非公式の首席交渉官会合を開いた。投資紛争の解決制度についてEPAから切り離し、まず関税・ルール分野の発効を優先する方向性を確認した。18年夏の日欧首脳による署名へ調整を急ぐ。
日本側からは鈴木庸一首席交渉官が出席した。EPAを巡って日本とEUは17年12月に関税・ルールなど主要部分で交渉を妥結。ただ投資家(企業)と政府の紛争解決と投資家保護の分野は日欧の隔たりが大きいため、結論を持ち越していた。
会合後に記者会見した鈴木氏は「最終決定ではない」としたうえで、投資分野はEPAから「分離の方向にもう向かって進んでいることを確認した」と説明。EPAとは別に投資協定を結ぶなどの対応を軸に交渉を続けていく見通しだ。
企業と国家の紛争解決を巡っては、日本側が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉と同じ仕組みを提案。不当な扱いを受けた企業が進出先の政府を訴えることができる「ISDS」での対応を求めている。一方、EUはISDSでは大企業による国家のルールへの干渉が防げないと懸念し、政府側が裁判官を選任する常設の「投資裁判所」制度を提案して対立が続いてきた。
投資分野の分離は、19年3月の英離脱前のEPA発効を最優先するのが狙い。EUでは投資部分を含む通商協定の発効にはすべてのEU加盟国の議会と一部地方議会の批准・承認手続きが必要。16年にはカナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)を巡って、ベルギー地方議会の反対で承認が遅れて混乱した。切り離しでこうした不透明要因はなくなる。