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歴史に目をつぶるポーランド ポピュリズムの重い代償

(グローバルViews)

ベルリン支局 石川潤

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ドイツ南部で16~18日に開かれたミュンヘン安全保障会議でひときわ大きな拍手を浴びたのは、ユンケル欧州委員長でもメイ英首相でもなく、1人のジャーナリストだった。イスラエルの大手紙やニューヨーク・タイムズで活躍するローネン・バーグマン氏だ。

バーグマン氏の母親は第2次世界大戦前にポーランドで生まれたユダヤ人だ。5歳の頃に教育大臣に表彰されるほど優秀な子どもだったが、戦争が始まると生活は一変。近所に暮らすポーランド人がゲシュタポ(秘密警察)に「ユダヤ人がいる」と密告すれば、命を失いかねない状況になった。

母は「ポーランド語は話さない」と誓った

まだ子どもだった母親がある夜、近所の住人が翌朝に自分たちを密告するつもりだという話を聞きつけ、ぎりぎりのところで一家は難を逃れた。すぐ近くに暮らしていたポーランド人の裏切り。戦後、母親は「残りの人生でポーランド語はただの一語も話さない」と誓ったという。

バーグマン氏はこうしたいきさつを会議場でとつとつと語ると、壇上に座っていたポーランドのモラウィエツキ首相に語りかけた。「こんな話をすれば、私はあなたの国では犯罪者になってしまう」

バーグマン氏の問いかけの背景には、ポーランドの上下両院を通過したばかりのいわく付きの法案がある。ポーランドがナチスによるユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)に加担したと非難することを禁じる法律で、有罪になれば3年以下の禁錮か罰金となる。事実かどうかにかかわらず特定の言論を封じ込めかねない内容で、表現の自由を制限するだけでなく、歴史から目を背けることにつながるとイスラエルや米国が強く反発している。

バーグマン氏に対し、モラウィエツキ首相は「ドイツ人だけでなくポーランド人の中にも、ユダヤ人、ロシア人、ウクライナ人と同じように虐殺の加害者はいる。そう語ったとしても、犯罪にはならない」と答え、イスラエルをさらに激怒させた。外交問題を引き起こしてまで法案の制定を急ぐ狙いは何なのか。

首相は法案の目的について、「ドイツ強制収容所」ではなく「ポーランド強制収容所」と表現するような間違いをなくすためだと強調した。アウシュビッツ収容所などはナチスドイツが生み出したが、現在の地図上ではポーランドにあるため、同国と結びつけられやすい。ポーランドは2017年だけで260回もこうした間違いをただしてきたという。

ポーランドは戦後、共産圏に組み込まれたため、正確な情報を西側諸国に十分発信できなかったとの思いもある。モラウィエツキ首相は、ナチスによって消された村として有名なチェコのリディツェを引き合いに「ポーランドには800のリディツェがあった」と語った。ナチスの被害者である同国が、加害者のように扱われてはたまらないというのが首相の考えのようだ。

法の支配に反した司法制度改革進める

この法律によって、都合の悪い事実に目をつむることにならないだろうか。ポーランドで活動するユダヤ人ジャーナリストのヤン・ゲバート氏は「法律には『ポーランド強制収容所』という表現と闘うとは書いていない。曖昧な規制は虐殺についての真実を追及する自由を制限しかねない」と話す。「第2次大戦中にポーランド人に救われたユダヤ人がいることは分かっているが、同時に別のポーランド人との間には悪い経験もあった。新たな法律が、加害者を告発しようとする人を罰することにならないか心配だ」という。

警戒の根っこには、民族主義的な色彩が強い強硬保守の与党「法と正義」が政権を率いていることがある。同党は法の支配に反した司法制度改革を進めており、欧州連合(EU)が制裁に動こうとしている。自由主義や表現・報道の自由をないがしろにしてきたこれまでの姿勢からすると、本当に「ポーランド強制収容所」という表現をただすことだけが目的なのか、いぶかしむ向きもある。

ポーランドでは1月、ナチスに関してもう一つ衝撃的な出来事があった。同国のテレビ局、TVN24による潜入取材で、ヒトラーの誕生日を祝うネオナチのパーティーの様子が映し出されたのだ。第2次世界大戦で多くの犠牲者を出したポーランドの若者が、ナチスの制服に身を包み、かぎ十字の旗などを掲げる。モラウィエツキ首相は先人の記憶と英雄的な戦いを踏みにじるものだと強く非難した。

野党からは、現政権が人種差別などを放置していることが極右やネオナチの台頭を招いたとの批判が飛び出した。集票力のある極右と与党の右派議員とのつながりを指摘する声もある。仮にネオナチが現政権の民族主義路線の副産物だとすれば、根は深い。

言論を規制するかのような法案もネオナチも、共通するのは事実と向き合うことを避け、歴史を軽視しようとする姿勢だ。欧州で広がるポピュリズムの代償は社会の分断だけではなく、歴史や記憶の領域にも及ぼうとしているようだ。

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いま大きく揺れ動く、世界経済。 自分か。自国か。世界か。このコラムでは、世界各地の記者が現地で起きる出来事を詳しく解説し、世界情勢の動向や見通しを追う。 今後を考えるために、世界の“いま”を読み解くコラム。

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