中小のものづくり支援 由紀HDと欧州系コンサル提携
成長する町工場グループが世界的な戦略コンサルとタッグを結成――。金属加工メーカーの由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)が設立した由紀ホールディングス(HD、東京・中央)は、欧州系コンサルティング会社の日本法人、ローランド・ベルガー(東京・港)との業務提携に合意した。由紀HDの大坪正人社長、ローランド・ベルガーの長島聡社長が相互にアドバイザーに就任。町工場が保持する要素技術の「見える化」と経営力の底上げを図るために、2社は人材の育成や情報発信などを進める。
中小のものづくり企業のなかには独自の技術を持つにもかかわらず、その技術を必要とする大手企業に知られないまま、埋もれているところが少なくない。由紀HDは大手企業とつながりが深いローランド・ベルガーとの業務提携によって、中小製造業が培った技術を大手に知ってもらうきっかけづくりを進める。
タッグを組むことで町工場の経営力の底上げも目指す。中小のものづくり企業は資金の限界などから経営課題に直面した場合でも、コンサルティングを導入できる会社が限られる。このため業務提携を通じて由紀HDは、大手企業に提供するローランド・ベルガーのコンサルティング手法の一端を中小のものづくり企業に取り入れたい考えだ。
大坪社長は家業の町工場を航空宇宙、医療など先端分野にシフト。由紀HDを2017年10月に設立し、技術はあるが後継者不在で廃業の危機にある中小製造業のグループ化を進めている。1月にVTCマニュファクチャリング・ホールディングス(東京・中央)が傘下に入り、グループ11社の売上高が約66億円、社員が約540人に拡大している。大坪社長は「業務提携によってイノベーションを加速したい」と意気込む。
ローランド・ベルガーはドイツのミュンヘンに本社を置き、世界34カ国に約2400人のスタッフがいる。業務提携を通じて町工場との接点を増やすことで、製造業の創造性や生産性を高める取り組みをさらに推進する。
(企業報道部 中沢康彦)
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