リスク回避に動く市場 円107円台、5カ月ぶり高値
円高・ドル安が進んでいる。13日の東京外国為替市場で円相場が一時、1ドル=107円台半ばに上昇。2017年9月以来、5カ月ぶりの高値を付けた。日経平均株価や米株価指数先物の下落で投資家心理が悪化し、円が買われた。日米の株式相場が荒い値動きをしているのを踏まえ、投資家がリスク回避に動く姿勢を続けている。
円高の動きは、欧州の取引時間にあたる日本時間の夕方に加速した。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は「中国の春節(旧正月)の長期休暇を前にアジアの投資家が持ち高整理のための円買い・ドル売りに動いた」と指摘する。「心理的節目とされる108円を突破し、損失を限定するための円買い注文を巻き込んだ」(国内銀行の為替ディーラー)との見方も出ている。
投資家心理に影を落としているのは「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数の高止まりだ。米国株が将来どれほど激しく変動するかを測る予想変動率(ボラティリティー)を示し、先行きへの警戒心が高まると上昇する傾向にある。これが5日に急上昇し6日には一時50を超えた。上昇は一服したが、投資家の不安心理が高まった状態とされる20を上回っている。
低金利の円は投資家心理が上向く局面では売られやすい。半面、先週以降のように投資家のリスク回避姿勢が目立つと、円を買い戻す動きが活発になり、上昇圧力がかかりやすい。
円高が進むと、輸出企業が海外で稼ぐ収益が目減りし、株価にもマイナスの影響を与える。日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業が17年度下期の事業計画の前提とする想定為替レートは109円66銭。足元の円相場は既に上回っている。
ただ、円が一本調子で上昇するとの見方は現時点では少ない。あおぞら銀行の諸我晃氏は「世界経済は好調で、日米の株安が今後も続くとは思えない」として、リスク回避の円高も長続きしないとみる。円の上値のめどとしては、17年に付けた高値である107円32銭近辺をあげる向きが多い。
107円台への急速な円高の進行を受けて、財務省の浅川雅嗣財務官は「投機的な要因かどうか注視している」とコメントした。いち早く市場のけん制に動いた格好だ。
市場関係者は14日発表の1月の米消費者物価指数に注目している。物価上昇率が市場予想を上回れば、米金利が一段と上昇し、米株の割高感が強まりかねないためだ。「米株安の再開でリスク回避の円買いが加速すれば、心理的節目とされる105円近辺までの円高もありえる」(ソシエテ・ジェネラル銀行の鈴木恭輔氏)との見方もある。