17年の難民申請、最多の1.9万人 就労の抜け穴に
法務省は13日、2017年に難民認定の申請をした外国人が速報値で、前年比80%増の1万9628人だったと発表した。7年連続で過去最多を更新した。申請から6カ月後に一律で日本での就労を認める運用だったため、不法滞在を避けて日本で働く抜け穴として制度を悪用する申請が相次いだことが背景にあるとみられる。
同省は今年1月15日、明らかに難民に該当しない申請者などの在留や就労の制限を始めた。今後は申請件数が大幅に減る可能性もある。
17年の難民認定申請者数は前年と比べ、8727人増え、2万人に迫った。国籍別ではフィリピンが最多で、前年比3.5倍の4895人。ベトナム(3116人)、スリランカ(2226人)が続いた。17年の申請の上位10カ国のうち、同年に難民と認定されたケースはゼロだ。
難民認定制度は人種や宗教などを理由に母国で迫害を受ける恐れがある外国人を保護するため、日本での在留を認める制度だ。申請6カ月後から一律で就労を認める運用は10年に始めた。申請中の日本での生活に配慮するためだったが、就労目的での申請が急増。再申請などを繰り返して働き続ける場合もある。
一方、17年に難民として認めた人数は前年から8人減の20人にとどまる。国籍別ではエジプトとシリアの5人が最も多い。それとは別に、難民とは認めないが、人道的な配慮を理由に45人について在留を認めた。内戦が続くシリアは11~17年に計81人が申請。審査を終えた76人のうち、申請を取り下げた6人を除く70人については、いずれも認定するか、人道上の配慮などで在留を認めた。
難民認定申請が急増すると、保護を必要とする「真の難民」の迅速な審査に支障が出かねない。17年の平均審査期間は9.6カ月で前年と比べ約1カ月伸びた。審査を待つ未処理数も昨年末時点で1万8千人に達する。
今年1月15日から始めた新たな運用では、「短期滞在」などの在留資格を持つ外国人を、申請書類をもとに2カ月以内に4分類。明らかに難民に該当しない人や同じような理由での再申請者は、新たな在留資格を与えず、就労を認めない。在留期限が来れば、強制退去の手続きを進める。
新たな運用の下での1月15~31日の平日1日あたりの申請者数は、以前の運用の昨年12月と比べ、約5割減った。法務省は、就労目的の難民申請が減ることで、迅速な審査につながるとみる。
難民申請者には留学生や、日本で働きながら職業上の技能を学ぶ技能実習生も目立つ。よりよい賃金を求めて失踪し、難民申請する外国人が多い。こうした申請は新運用で抑えられる可能性がある。ただ、単純労働者は受け入れない原則を掲げながら、貴重な働き手となっている外国人を、社会でどう位置づけるのかについては、抜本的な議論が必要になりそうだ。