「Xスポーツ」に企業の視線熱く 平昌で露出増
スノボ平野・鬼塚ら支援
9日に開幕した平昌冬季五輪。スピードスケートやノルディックスキーなど伝統競技とともに主役になりそうなのが、スノーボード、フリースタイルスキーといった「エクストリーム(X)スポーツ」と呼ばれる新興競技の選手たちだ。実業団や大学に籍を置き、国の手厚い支援を受ける従来の五輪選手と異なり、若くしてスポンサーを得て世界を飛び回る新世代でもある。若き実力者たちに、企業も熱い視線を送っている。
「目指すところは一つ」。今月1日、東京都内で記者会見したスノボの平野歩夢(19)が身に着けた帽子、ウエア、板にはいずれも異なるロゴが入っていた。スポンサー契約を結ぶ企業で、なかでも板を提供する米バートン社との契約は小学4年からだ。
平野がスノボを始めたのは4歳。10代前半から海外に遠征し、2014年ソチ五輪銀メダルなど好成績を収めてきた。競技活動を支えてきたのがバートンをはじめとするスポンサーで、現在は7社を数える。ヘッドホンや小型カメラ、エナジードリンクなど若者への認知度やファッション性の高いアイテムが多い。
スノボは1998年長野大会で五輪入りした歴史の浅い競技。五輪やワールドカップ(W杯)を頂点とする伝統競技と異なり、独自のカルチャーが根付く。米スポーツ専門局ESPNが主催する賞金大会「Xゲーム」はW杯よりもレベルが高く、メディアへの露出も高いため強豪選手が集まる。人気ぶりに国際オリンピック委員会(IOC)も目をつけ、冬季だけでなく20年東京大会でもスケートボードや自転車BMXなどXゲームの人気種目の採用を決めた。
平野も昨季までの2年、全日本スキー連盟の強化指定選手を外れてXゲーム出場などプロ活動を優先してきた。「プロと五輪の両立は大変だけど、そこで自分の価値を大きくできればと思っている」と語る。
もともと冬季競技は夏季競技に比べて国の強化費も潤沢ではない上、スノボは全日本スキー連盟でもアルペンやジャンプに対して"外様"の身で「肩身が狭い思いをしている」(関係者)。W杯遠征の経費も一部自己負担といい、平昌代表の大久保勇利(17)はクラウドファンディングで寄付を募り、W杯を転戦した。恵まれているとはいえない環境が、選手の自立と柔軟度の高い競技活動を促している。
平野が男子スノボのエースなら、女子のエースは15年世界選手権優勝の鬼塚雅(19)。昨年7月に星野リゾートと2年の所属契約を結んだ。同社にとってスポーツ選手の契約は初めて。鬼塚が幼少期から練習してきた福島県のスキー場「アルツ磐梯」を同社が運営する縁で契約に至った。
同スキー場に鬼塚専用のジャンプ台など練習施設を整備し、メダル挑戦を後押しする。「ウインタースポーツは欧州が本場だが、アルツも雪質なら負けない。鬼塚選手の活躍が国内外へのアピールになる」(同社)。冬季五輪は次回22年も北京での開催が決まっており、アジアからのインバウンド(訪日外国人)取り込みを狙う同社の期待も背負う。