パナソニック業績上振れも、稼ぐ体質へ道半ば
パナソニックは5日、2018年3月期の連結営業利益(国際会計基準)が前期比26%増の3500億円になりそうだと発表した。従来予想から150億円を上方修正し、売上高は7期ぶりの8兆円の大台回復に近づいた。ただ、売上高営業利益率は4%程度にとどまり、過去最高益を大きく更新するソニーと比べれば低水準だ。津賀一宏社長には今後の成長に向けた改革が改めて求められそうだ。
パナソニックの梅田博和取締役兼最高財務責任者(CFO)は5日に都内で開いた決算記者会見で「期待したところはそれほど稼がないが、それ以外が想定以上に上振れする」と語った。18年3月期の連結売上高は8%増の7兆9500億円と1500億円を積み増しているが、梅田CFOが指摘するように期待した車載電池などが予想ほど伸びなかった。
増収の最大のけん引役が車載機器とセンサーなど電子部品だ。車の自動化や電装化が進む追い風を受けてカメラや車内の情報表示機器が伸びる。スペインの自動車部品メーカー、フィコサ・インターナショナルの新規連結も寄与。9月には両社で共同開発した後方の映像を映す電子ミラーを納入したと発表した。
期初に業績のけん引役として見込んでいた電池事業は足踏みしている。米テスラと共同運営する大規模リチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」(ネバダ州)では稼働率が低迷。テスラの新型電気自動車の立ち上げが遅れているためだ。
18年3月期見通しの電池事業は売上高が4265億円、営業損益が54億円の赤字だ。前回の予想と比べて、それぞれ450億円、120億円下振れすることになる。梅田CFOは「テスラ側が必死に改善に努めており、そこが立ち上がってくると急激に改善するので来期以降は確実によくなる」と強調した。
家電事業も売り上げは好調な一方で、利益は想定より下振れする。白物家電が主力の社内カンパニー「アプライアンス社」の通期売上高見通しは200億円引き上げ、2兆5700億円とした。エアコンや美容家電が中国向けに伸びており16年に買収した食品流通の米ハスマン社も上向いた。
一方で、銅などの原材料の高騰を受け、営業利益見通しは50億円引き下げた。洗濯機が17年4~12月期で国内在庫が膨らんだことも響く。
梅田氏が主要事業の他に稼いだ製品として挙げたのが高輝度のプロジェクターとコンセントなど配線器具だ。プロジェクターを管轄する「コネクティッドソリューションズ社」は自動車やスマートフォン(スマホ)業界向けに半導体の実装機が伸びる。国内向けにノートパソコンや決済端末も想定以上の伸びだった。
同社は世界首位である航空機向けシステムが米証券取引委員会(SEC)などから不正の調査を受けていたが、「協議が進展してある程度見積もれるようになった」(梅田氏)。当初見積もっていた関連費用が軽くなり、営業利益の上振れにつながる。
住宅や施設向けの設備をてがける「エコソリューションズ社」は海外向けを強化している効果が出る。照明や換気システムで中国、北米の開拓が進み増収増益を見込む。
梅田CFOは「(白物家電や電子部品など)収益を着実に伸ばしていく事業が、(多額の先行投資が必要な)車載事業を支える構図になっている」と強調する。
津賀社長は今年で就任から6年になり、不採算事業の撤退など構造改革を進めながら、自動車向けなど成長事業を育ててきた。ただ、18年3月期の利益率は最低ラインとした5%を下回る見通しだ。これまで投資してきた事業で確実に高い利益を確保できるかどうか。津賀改革の真価が問われている。
(大阪経済部 上田志晃)
[2018年2月6日付 日経産業新聞]