独仏首脳、保護主義に懸念 ダボス会議で米をけん制
【ダボス(スイス東部)=小滝麻理子】独仏の首脳が24日、スイス東部ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で相次ぎ保護主義の台頭に懸念を表明した。「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領を念頭に、ドイツのメルケル首相は「保護主義は解決策にはならない」と強調。フランスのマクロン大統領も「グローバル化は大きな危機に直面している」と警戒感を示した。トランプ氏は25日にダボス入りする予定で、反保護主義を訴える欧州首脳らとの対立構図が強まりそうだ。
メルケル氏は同会議で演説し、「国家主義や大衆迎合主義(ポピュリズム)が台頭し、多くの国で二極化している」と訴えた。その上で「保護主義や孤立化は何に対する答えにもならない。我々は第2次世界大戦後に国際連合など多国間の枠組みを構築した。過去から学ばなくてはならない」と語り、国際協調の重要性を強調した。
その後に登壇したマクロン氏も「貿易の面で世界は保護主義の色を強め、ばらばらになっている」と警告した。ポピュリズムが広がる背景に「取り残されたと感じる人々がいる」と指摘。経済格差などを埋める政策が必要になると話した。
その上で、両氏はともに欧州連合(EU)改革の必要性について言及。メルケル氏は「温暖化など様々な問題の解決にあたるためにも強いEUをつくる」と述べ、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を表明した米国をけん制した。
一方、メルケル氏は独仏で法人税制の共通化を検討していることも明らかにした。米国が税制改革を断行し、自国への投資還流をめざして法人税率の大幅な引き下げに踏み切るなか、独仏で国際的な税率の引き下げ競争に歯止めをかけたいとの狙いをにじませた。
会議では、独仏以外の首脳からもトランプ政権が掲げる米国第一主義を警戒する声が相次いでいる。イタリアのジェンティローニ首相はトランプ氏に関する質問に対して「いずれのリーダーも自国経済を守ろうとするのは正当で理解できる」とした上で「それには明らかに限度がある」と断じた。インドのモディ首相も保護主義の高まりに強い警鐘を鳴らした。
トランプ氏は25日午後(日本時間同日夜)にもダボスに到着する見通し。最終日の26日に演説する予定で、改めて「米国第一」の政策を示すとみられる。経済・政治のグローバル化を推進してきたダボス会議の場でトランプ氏がどのような考えを述べるのか、世界が注目している。
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