18年のJリーグ、引っ張る2強 注目は長崎
サッカージャーナリスト 大住良之
1月30日にサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフを戦わなければならない柏が1月11日に鹿児島キャンプでトレーニングを開始したのを皮切りに、Jリーグの各クラブが次々とプレシーズンのトレーニングに入った。開幕は2月23、24、25日。26シーズン目の「Jリーグ2018」は、どんなシーズンになるのだろうか――。
■J1、6クラブで監督交代
2017年の18クラブから甲府、新潟、そして大宮の3クラブがJ2に降格し、代わって湘南、長崎、そして名古屋が昇格。今年もJ1は18クラブで争われる。もちろん1ステージ制、全チームがホームアンドアウェー方式で対戦する全34節のリーグだ。
今季は18クラブ中6クラブで監督の交代があった。
札幌は昨年までチームを率いた四方田修平監督がコーチに退き、昨年途中まで浦和の監督を務めていたミハイロ・ペトロビッチ監督が就任。中期的なビジョンで「J1定着」を目指すチームづくりに着手した。広島からMF宮吉拓実、浦和からMF駒井善成、川崎からMF三好康児というテクニックに優れた攻撃的選手を獲得できたことは、ペトロビッチ監督のチームづくりに大きな後押しになるだろう。
FC東京を率いるのは昨年までG大阪で指揮をとっていた長谷川健太監督。攻撃の中心だったFW大久保嘉人とFWピーター・ウタカを失い、柏からFWディエゴオリヴェイラを獲得したが、若手を伸ばすことが大きな課題だ。
横浜Mには、昨年オーストラリアをワールドカップ出場に導いたアンジェ・ポステコグルー監督が就任。今季唯一のJリーグでの指揮経験のない監督だ。攻撃の切り札であるFW斎藤学とFWマルティノスを失い、どうチームを立て直すか。
清水の新監督となったヤン・ヨンソン氏は昨年途中から広島で指揮をとり、なんとかJ1残留に導いた人。昨年仙台で8得点を挙げたブラジル人FWクリスランを軸に上位進出を目指す。
G大阪の監督にはかつてC大阪で3度にわたって監督を務めたレヴィー・クルピ氏が就任。日本代表MF井手口陽介の欧州移籍の痛手をどう回復させるか。
そして広島にはFC東京、甲府で指揮をとった城福浩監督が就任した。タイ代表のエースのFWティーラシン、磐田で大きく成長して復帰したMF川辺駿が、昨年残留争いで苦しんだチームをどう変えるか。
だが新監督を迎えたこの6クラブがいきなり優勝争いに絡むのは少し難しそうだ。昨年Jリーグ初優勝を果たした川崎、そして終盤まで首位を保った鹿島の「2強」が、さらに戦力を厚くしたからだ。
■川崎に斎藤、鹿島は内田復帰
川崎は攻撃陣に「出戻り」のFW大久保嘉人と横浜FMのエースだったFW斎藤学を補強した。斎藤はワールドカップによる中断が明けてからの出場となりそうだが、昨季トップの71得点を挙げた破壊力はさらに増しそうだ。
一方の鹿島はドイツからDF内田篤人が復帰。攻撃陣に変化はないが、DF昌子源、MF三竿健斗など伸び盛りの選手が多く、さらに激しくなった競争がこのチームの最大の強みだ。
昨季J2から昇格していきなりリーグ戦3位、ルヴァンカップと天皇杯の2冠を獲得したC大阪は、韓国から大型の代表FW梁東炫(ヤン・ドンヒョン)、浦和からMF高木俊幸、フィンランドのヘルシンキからMF田中亜土夢を補強して攻撃陣の選手層を増した。
昨季4位の柏はFWディエゴオリベイラ、FW武富孝介、DF輪湖直樹らの主力を放出したが、新潟からFW山崎亮平、福岡からDF亀川諒史と的確な補強を成功させて戦力ダウンを回避した。
■バランスよくなった浦和
昨年ACLを制覇した浦和は、キャンプ入り後にFWラファエルシルバが中国に移籍という大きな痛手を負ったが、横浜MからFWマルティノス、柏からFW武富孝介、さらに神戸からDF岩波拓也を補強し、期限付きで湘南でプレーしていたMF山田直輝を呼び戻し、戦力的にはよりバランスが取れた。
ACLに出場する川崎、鹿島、C大阪、柏(プレーオフからの出場)はリーグの序盤戦で力をそがれるのは間違いない。このスキをついて、Jリーグに集中できる浦和がスタートダッシュする可能性は十分ある。
それに対抗するとしたら磐田だろうか。名波浩監督が就任して5シーズン目。名波イズムが完全に浸透し、大ベテランのMF中村俊輔も健在だ。中盤のダイナモ役となっていたMF川辺駿が広島に戻ったのは痛手だが、名古屋グランパスの中心選手MF田口泰士を獲得、今季の新人で最も期待できるFW中野誠也(筑波大)を加えた攻撃陣には注目していい。
神戸は韓国代表として昨年12月の東アジアE-1選手権の日本戦でワールドクラスのFKを決めたMF鄭又栄(チョン・ウヨン)が3年ぶりに復帰、MF三田啓貴(仙台)、FWウェリントン(福岡)など効果的な補強ができた。昨年途中に加入した元ドイツ代表FWポドルスキへの支援態勢がいよいよ整い、一挙に優勝争いに加わるかもしれない。
やや苦しいのが仙台だ。中盤の大黒柱MF三田啓貴と攻撃の切り札FWクリスランを失い、戦力ダウン気味だ。
フィッカデンティ監督3シーズン目の鳥栖もFW豊田陽平が韓国に移籍し、MF高橋秀人(神戸)を加えたが、戦力はプラスとは言えない。
■名古屋、上位進出の可能性
昇格3クラブの中では、名古屋がいきなり上位進出の可能性を感じさせる。MF田口泰士とFWシモビッチを放出したが、オーストラリア代表GKランゲラックとブラジル代表FWジョーという「超目玉選手」を補強。風間八宏監督の下で急成長した若手とかみあえば、上位を脅かす力は十分ある。
湘南は曺貴裁監督7シーズン目(現在のJ1で最長政権)。恒常的な主力の流出に悩まされながら、この間に3回もJ1昇格に導いたのは驚くべきことだ。今季は広島からMFミキッチ、韓国から188センチの長身代表FW李庭協(イ・ジョンヒョプ)を獲得、J1定着を目指す。
今季の大きな注目は昨年のJ2で終盤に13戦無敗という驚異的な追い上げを見せて2位に入り、初めてのJ1昇格を果たした長崎だ。13年に就任した高木琢也監督の6シーズン目。攻撃にFW鈴木武蔵、守備にDF徳永悠平、DF中村北斗、GK徳重健太というJ1でのプレー経験豊富な選手を補強し、J1での足がかりをつかみたいところだ。
今年のJリーグの大きな特徴は、6月から7月にかけてロシアでワールドカップが行われ、それによって5月下旬から約2カ月間の中断期間が挟まることだ。シーズンの3分の2近くが中断明けの開催となるため、真の優勝争いはここからになる可能性が高い。序盤になかなか調子が出なくても、あまり引き離されずについていければ、中断期間のトレーニングあるいは補強次第で十分巻き返すことができる。
試合が必ず0-0から始まるように、開幕は「横一線」。どこが飛び出すか、出遅れたチームは中断期間を利用してどう立て直すか。
開幕まであと4週間――。