南北合同チームで合意 五輪アイスホッケー女子
【ソウル=山田健一】韓国と北朝鮮は17日、2月の平昌冬季五輪参加について協議する次官級の南北実務会談を開き、アイスホッケー女子の南北合同チーム結成で合意した。韓国のスキー選手が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長ゆかりのスキー場で練習することも決めた。五輪を「人質」に韓国を融和路線に引き込む北朝鮮の姿勢が鮮明だ。
南北の合意内容は20日にスイスで予定する国際オリンピック委員会(IOC)などによる4者会談を経て正式決定する。南北の合同チームは五輪史上初めて。選手団は2月1日、代表団や約230人の応援団が同7日に陸路で韓国入りする。
17日は韓国側が統一省の千海成(チョン・ヘソン)次官、北朝鮮側は祖国平和統一委員会のチョン・ジョンス副委員長が首席代表を務めた。午前10時に始まった会談は午後9時すぎまで続き、11項目の共同報道文を採択して終了した。
報道文によると、南北は白地に青で朝鮮半島を描いた「統一旗」を手に開会式で合同入場行進する。選手団や代表団が韓国入りするのに先立ち、北朝鮮は1月25日から現地視察の先遣隊を派遣する。3月のパラリンピックにも代表団や選手団、応援団などを150人規模で派遣する。
北朝鮮は韓国入りの経路について「西海線陸路を利用する」と回答した。南北軍事境界線のある板門店や、南北経済協力事業の「開城工業団地」を挟む南北の往来で使われるルートを示した。北朝鮮に対する航空機や船舶の提供を禁じる国連制裁を考慮し、陸路を選んだとみられる。
南北は、北朝鮮兵士による韓国民間人の銃殺事件をきっかけに観光事業が中断している北朝鮮東部の金剛山(クムガンサン)での文化行事や、同山近郊の「馬息嶺(マシンニョン)スキー場」の活用についても協議した。同スキー場は正恩氏が指示し「世界最高水準」をテーマに造った。トップクラスの選手を練習に呼び込み、正恩氏の権威をアピールする狙いとみられる。
北朝鮮にとって一連の議論は五輪後を見据えた布石との位置付けだ。南北の経済協力や観光につながる議題を取りあげ、韓国政府に融和を呼びかける戦略が透ける。有力な外貨獲得手段となる「開城」や「金剛山」の再開に向けた雰囲気づくりを狙った可能性もある。
韓国は国連制裁との兼ね合いもあり、経済協力や観光事業の再開を表だっては議論しにくいが、五輪の成功は文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって最優先課題でもある。文氏は17日、南北合同チームを巡り「1つのチームになれば歴史の名場面になる」と述べた。北朝鮮が融和を演出し、国際社会の圧力を和らげる舞台として五輪を利用する懸念はぬぐえない。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。