アルカリ水で本格芋焼酎 鹿児島大など、新特産品づくり
鹿児島大学とミネラルウオーター製造販売のエスオーシー(SOC、同県垂水市)、焼酎メーカーの新平酒造(同県大崎町)はSOCが扱う天然アルカリイオン水を用いた本格芋焼酎の開発を始めた。共同研究契約を結んでおり、今春以降の販売を予定する。多くの既存のアルコール飲料のように酸性ではなく、焼酎が苦手な人にも売り込める新たな特産品づくりを産学連携で目指す。
「当初からの夢を事業として形にしたい」。SOCの草間茂行社長は意気込む。今回取り組む焼酎は同社の「温泉水99」を原酒の仕込みや割り水に用いる。温泉水99は桜島の麓に位置する垂水温泉の地下750メートルからくみ上げ、ペーハー値が9.5~9.9のアルカリ性。硬度は1リットルあたり1.7ミリグラムの超軟水だ。粒子が細かく浸透力が高いので料理や飲み物に使えばおいしくなるという。
開発する焼酎は華やかな香りやマイルドな味わい、のどごしのよさを打ち出す予定だ。黒こうじや鹿児島県産の紅芋を用いる。SOCは温泉水99を使うアルカリ性の本格芋焼酎「紅息吹」(ペーハー値8、720ミリリットル1642円)を新平酒造と試験生産。同社通販サイトで販売している。
今回の開発には鹿児島大大学院医歯学総合研究科の乾明夫教授が研究代表者として参加。糖代謝などに関わる有効成分をより効率的に抽出できるペーハー値を探る。乾教授らの研究グループは食事中に本格芋焼酎を飲むと食後の血糖値上昇が抑えられることを実験で確認。研究結果が16年に米国の科学学術雑誌に掲載された。
鹿児島大は農学部附属焼酎・発酵学教育研究センターを持ち、地場産業である焼酎の教育・研究者がいる。米スペースシャトルで国際宇宙ステーションに運び、16日間滞在して地球に帰還した酵母で仕込んだ焼酎なども企画・販売している。今回は焼酎の新たな機能性に注目して開発に取り組む格好だ。
SOCは1984年設立。98年に温泉水の販売を始め、2002年に垂水市で自社工場を完成させた。16年12月期の売上高は7億6千万円。新平酒造は1904年創業で売上高は非公表。
鹿児島県産の本格焼酎の出荷数量は16酒造年度(16年7月~17年6月)まで3年連続で宮崎県産を下回り、全国2位にとどまっている。今回の産学連携は県内焼酎各社を発奮させる材料にもなりそうだ。
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