カナダ、米国をWTOに提訴 「制裁関税を不当に活用」
【ワシントン=鳳山太成】カナダ政府は10日、反ダンピング(不当廉売)関税などの貿易制裁措置を不当に活用しているとして、米国を世界貿易機関(WTO)に提訴したと明らかにした。自国産業の保護のために制裁関税を積極的に導入しているトランプ米政権との対立激化は必至だ。1月下旬に次回会合を控える北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉にも影響を及ぼしそうだ。
10日公表されたカナダの申立書によると、米国が課す反ダンピング関税や政府補助金に対する相殺関税の多くはWTO協定が認める水準を超えており、関税の徴収や決定過程など米政府の手続きがWTOルールに違反していると指摘した。
WTOの紛争解決手続きに基づき、まず米国と2国間で協議する。60日以内に問題が解決しなければ、裁判の一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は10日の声明で「事実無根だ。カナダにとっても悪影響を及ぼす」と強く反論した。
貿易赤字の削減を公約に掲げるトランプ政権は制裁措置を積極活用している。反ダンピング関税や相殺関税に関する調査件数は、政権発足から2018年1月9日までで82件に達し、前年同期に比べて約6割多い。現在、カナダのボンバルディアの航空機に約300%の制裁関税を発動することも検討している。
カナダは1月23日から米国、メキシコとNAFTA再交渉の第6回会合をカナダのモントリオールで開く。米国が突きつけた厳しい要求にカナダとメキシコは激しく反発しており、交渉は難航している。トランプ大統領は交渉が不調に終わればNAFTAから脱退すると脅しをかけている。