大阪大入試ミス 外部指摘を学内で共有せず、対応半年遅れに
大阪大が本来は入試に合格していた受験生30人を不合格としていたミスで、外部から指摘を受けた問題の誤りについて、作成を担当した教授2人だけが把握していたことが、7日までに分かった。指摘は少なくとも3回あったが、学内での情報共有に半年を費やしており、専門家は組織的な対応の遅れを問題視。受験シーズン本番を目前に控え、同大学は再発防止の徹底に懸命だ。
3つある正答を1つと誤る
入試ミスの公表から一夜明けた7日。大阪府吹田市の大阪大入試課では朝から、いったん不合格となった30人のうち、まだ追加合格を伝えていない受験者への連絡や、ミスに関する問い合わせへの対応などに追われた。
ミスは2017年春の入学者向け入試で起きた。理学部などを志望する3850人が受験した物理で、音波に関する数式を解答する設問に正答は3つあったが、1つのみを正答として採点。この解答を前提に数値を求める次の問題も成立しなくなった。
物理の問題作成は、ミスが発覚した問題の作成責任者と副責任者の2人を含む理学部の教授ら10人以上が担当。16年4月以降で15回以上の会議を開き「(作成後も)十数回にわたってチェックした」(教育・学生支援部)という。
教授2人で対応協議
しかし、合格発表から約3カ月後の6月、高校や大学の教員らによる「物理教育を考える会」が、同会の会合に出席していた作成責任者にミスを指摘。作成責任者は後日「本学の解答例が正しい」と説明した。
8月にも外部から理学部宛てにミスを指摘するメールが届いたが、作成責任者ら2人は入試課を通じて「誤りはなかった」との趣旨のメールを返信。同大学によると、2度の指摘は2人だけが把握して対応を協議しており、他の教授など学内で情報共有していなかったという。
大学がミスの存在を認識し、設問と正答の検証を始めたのは12月。これまでとは別の人物が、ミスの理由を数式を示しながら詳細に説明するメールを送った。3回目の指摘を受け、責任者ら2人以外の教員4人も加わって精査。合否判定をやり直した。
「問題確認、別チームで」
大学入試に詳しい桜美林大の田中義郎教授(教育学)は「最初の指摘の段階で組織的な調査を進めていれば、不合格となった受験生の秋入学もできたかもしれない」と指摘。「問題作成の責任者とは別に、実際に問題を解いて出題や採点にミスがないかどうか調べるチームを設ける必要がある」と強調する。
大学入試センター試験は1月13日に始まり、大阪大では2月25、26日に一般入試が実施される。同大学は18年の入試に向け、外部から指摘があった場合、問題作成に携わった教員以外のメンバーも参加して内容を検討する「出題検証委員会」を設置するといった対策を進める方針。