ラグビーW杯観戦、食事やショーと 英系企業提案
スポーツ観戦を楽しみながら接待や商談も――。ラグビーの2019年ワールドカップ(W杯)日本大会で、欧米流の新たなスポーツ観戦のスタイルがお目見えする。観戦券に試合前後の飲食、試合に関するトークショー、エンターテインメントなど様々なサービスを組み合わせたプログラム「スポーツホスピタリティー」だ。
英国のスポーツ・トラベル・アンド・ホスピタリティー・グループ(STHグループ)は12年のロンドン五輪、15年のラグビーW杯イングランド大会などでこのプログラムの実績を持つ。STHグループが日本に設立したSTHジャパン(東京・新宿)が販売する。同社にはJTBが49%出資している。
STHジャパンによると、19年W杯で取り扱うこのプログラムの詳細については今後詰める。11月2日に決勝が行われる横浜国際総合競技場(日産スタジアム、横浜市)から歩いていける場所に、需要に応じて数千人規模の施設を設ける。施設内では試合前に観戦ムードを高めてもらおうと、上質な食事と飲み物、ラグビー界を代表する元選手が試合の見どころを解説する「トークショー」、音楽などのエンターテインメントを楽しめる。試合後も余韻を楽しめるよう、飲食などができる施設にする計画だ。
施設内には、内装などを利用者が好みに応じて設定を変えられる個室(20人以上)も用意する。「大会の公式スポンサーは1業種1社が原則。スポンサーでない企業がここを接待や商談のための拠点として利用することもできる」と嶋田智之マーケティング部長は明かす。正面から観戦できるカテゴリーAのチケット(決勝の価格10万円)、試合の公式プログラム、大会オリジナルの限定記念品なども人数分セットになっている。「通常ならチケットは最大で6枚しか購入できない。このプログラムならそれ以上の確保もできる」(嶋田氏)とメリットを話す。横浜以外のスタジアムの試合の場合は、試合前の平日に都心部などで同様に楽しめるパッケージの設定も検討している。
スポーツ観戦と食事、観光を組み合わせるスポーツホスピタリティーは欧米、とりわけ欧州で観戦スタイルとして定着している。スタジアムを設計・建設する場合、このプログラムを実施できる施設も併設するのが当たり前になっているという。しかし、日本のスタジアムには対応できるところはほとんどない。国内ではこれまでサッカーのW杯、自動車のF1レースなどのスポーツイベントで、主催団体やスポンサーなど一部の関係者向けに限られていたプログラムだった。19年W杯では、これが大会スポンサーでない企業や個人を対象に販売されるようになる。
プログラムの価格はまだ最終的には決まっていないが、たとえば個室を利用できる「ウェブエリス・スイート」(20人以上)が1人20万円程度から、VIP(最重要人物)向けレストランのテーブル席が利用できる「ウェブエリス・パビリオン」(10人以上)が同じく1人18万円程度からになる見込み(いずれもカテゴリーAのチケット込み)。
スポーツの国際大会の人気は高まっており、なかでもラグビーW杯は欧米やオセアニアの富裕層が観戦に訪れる傾向が強いといわれている。日本で過去最大規模のスポーツホスピタリティーは観戦する外国人観光客に支持される可能性も高い。ただ、スポーツ観戦の新たなスタイルとして定着させるには、コンテンツ内容やマーケティングなどの工夫も問われる。
日本では成長産業の柱として「スポーツ」や「観光」が挙がっている。スポーツ産業について政府は、15年の5.5兆円から25年には15兆円へ成長させることを目標に掲げている。スポーツと観光を組み合わせられるスポーツホスピタリティーは、工夫次第でスポーツ観戦の文化を変える可能性も秘めている。
(竹内太郎)