検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

携帯3巨人の牙城 中古スマホは切り崩しの切り札か?

詳しくはこちら

国内の携帯電話市場でマイナーな存在だった中古のスマートフォン(スマホ)がにわかに脚光を浴びている。総務省が携帯の寡占状態を崩すため、通信料金を低く抑えられる中古端末の普及を後押しする方向に動き出したからだ。すでに格安サービスを提供するビックカメラなど大手も中古スマホ事業を強化している。中古スマホがメジャーになり大手3社の牙城を切り崩す斧(おの)になれば、頭打ち状態の格安スマホ業者が息を吹き返す可能性がある。

「総務省が中古スマホの流通市場の確立に向けて踏み込んだ。これからも前向きに検討されるはず」――。中古スマホの販売大手の携帯市場(東京・千代田)の粟津浜一社長は25日、東京・霞が関の総務省で開かれた「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第1回会議を傍聴し、感慨深げにこう語った。

粟津社長は日本の中古スマホ市場の草分け的な存在であり、総務省から何度も意見を求められた論客だ。中古スマホの信頼を高めるために業界団体も設立した。NTTドコモなど携帯大手3社が米アップルのスマホ「iPhone」シリーズの中古品の多くを高値で下取りして新品を販売し、顧客を囲い込むことを問題視してきた。

だが、風向きが変わりつつある。検討会では坂井学総務副大臣に加え、鈴木茂樹総務審議官、渡辺克也総合通信基盤局長ら通信行政を担う大物官僚が出席し、有識者の声に耳を傾けた。通信行政に詳しい野村総合研究所の北俊一プリンシパルは「海外と比べ中古端末が流通しない。日本の特殊性を浮き彫りにしないといけない」と指摘した。

検討会の議論は携帯電話の競争促進策の立案の参考にされる。総務省は格安スマホの普及を後押ししてきたが、大手の対抗値下げで苦戦中だ。この状況を打破するためにカギを握るのが中古スマホだ。

 粟津社長は「日本で中古スマホの市場を2倍にしたい」と意気込む。現在は大手3社を中心にスマホの販売は年3000万台で、中古端末は1割弱に相当する250万台程度に過ぎない。欧米では若者層の多くはまず割安な中古スマホを手に入れることが多い。新品至上主義は日本独自の風潮とされる。人気のiPhoneの中古がなかなか手に入らないからだ。風穴を開けるべく動いてきたのが粟津社長だった。

粟津社長は筑波大学大学院を修了後にブラザー工業に入社。ウエアラブル端末のサービス開発などを手がけた。だが、起業の夢をあきらめられず、09年に中古携帯電話のネット販売事業を始めた。当初買い取れたのはたった5台だ。現在では年1万5千台を買い集められるほど急成長した。

他社との巧みに提携したことが奏功した。直営店は東京・神田など3カ所だが、全国各地の有力な中古品販売会社などを中心に携帯市場の代理店は200店にまで増えた。レンタル店のフタバ図書(広島市)や中古品店の「ハードオフ」などだ。粟津社長は学生や主婦らアルバイトも2時間程度の研修で中古品の査定ができる専用システムを提供している。

さらに、携帯市場はメルカリ(東京・港)と手を組む。フリマアプリ内でライブ動画を配信し商品を販売できる機能「メルカリチャンネル」を使い、品質の良さをアピールする。「女性など中古品を知らなかった層へ浸透できる」と粟津社長は言う。

流通大手も動き出した。特にビックカメラは傘下のソフマップやコジマを含めた全国64店で中古スマホの買い取りや販売を手掛ける。特にアップルのiPhoneの下取りでは5000円のキャッシュバックを実施するなど意欲的だ。自ら手掛ける格安スマホサービスの顧客増につなげる。

 旗艦店であるビックカメラ新宿西口店の渡辺和也エリアマネージャーは「中古によいイメージのない人は多いが、安心感をアピールしたい」と強調する。ビックカメラの強みは流通大手としての顧客の信頼の高さを生かし、安心して消費者に中古スマホを売ったり買ったりしてもらうことだ。

MMD研究所(東京・渋谷)の調査によると、「中古スマホに抵抗がある」と答えた人は8割近いほど多かった。「個人情報が心配で手放せない」というのが主な理由だ。ビックカメラではデータ消去などを徹底していることを顧客に強くアピールしている。

「毎日100台以上のスマホが届いている。人手が足りないくらい」――。傘下のソフマップでサービス事業部商品管理センターの飯田大介リーダーは中古スマホの管理拠点「浦安センター」(千葉県浦安市)でこう語る。スマホの多くはアップルが2年前に発売したiPhone6sなどだ。経験豊富なスタッフが製品のチェックやデータの消去などをしている。

ビックカメラでは格安スマホサービス「BIC SIM」と中古のiPhone6sを組み合わせることもできる。最新の「iPhone8」を主力とする携帯大手3社の料金プランと同じデータ通信量で比較すれば、ビックカメラの2年間の総利用料は9万円弱になる。高性能カメラなど十分な機能がそろう6sで我慢すれば、大手3社の半分以下だ。これが可能なのも中古iPhoneの買い取り体制が整ったからだ。

また、イオンリテールも格安スマホ「イオンモバイル」の一部店舗ではレンタル大手のゲオ(名古屋市)の中古スマホの棚を設けた。イオンモバイルのSIMカードとゲオの調達した中古端末をセットで購入できるようにし、利用客に割安感をアピールする。

だが、中古スマホ市場をメジャーにするには高い壁が依然としてそびえ立っており、その牙城を切り崩すことは容易ではない。

日本の携帯電話市場はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクという大手3社が「新品神話」で優良な顧客を抱え込んできた。

MM総研(東京・港)によると、16年度のスマホの国内出荷台数は3013万台だ。このうち、消費者に人気がある米アップルの「iPhone」は5割を占める。端末の購入の負担を軽減する大手3社の料金プランに割安感がある。それが格安スマホ事業者にとって顧客の受け皿を増やせない壁になってきた。

 大手3社が下取りした中古のiPhoneの多くは専門事業者を通じ、香港などからアジアや中東といった海外に転売されることが多い。

特に中国の深圳市には香港のオークションから流れてきた日本の中古iPhoneなどが大量に販売されている。小さな店舗が密集しガラス棚に100台近くが詰め込まれる。「J/A」と書かれた日本の大手3社の契約者が使った端末はきれいなために人気が高い。

iPhone8の販売前になるが、iPhone6s(64ギガバイト)のモデルであれば、3万4千円。大手3社の下取り価格は当時では3万円ほどだ。海外に転売すれば、自らの懐をあまり痛めずに国内での中古流通を抑えられる仕組みだ。

総務省は6月、新規端末の価格が2年前の同型スマホの買い取り価格より高くなるように求めた。例えば、発売から2年のiPhone6sを3万円で下取りするなら、新型のiPhone8は3万円以下では売れないということだ。高額の通信サービス料を前提に8を安く売ることができなくなり、中古スマホ市場を変えつつある。

中古スマホの主な販売会社が加盟するリユースモバイル・ジャパン(RMJ)によれば、「iPhone6s」の9月の中古専門店の平均買い取り価格は2万1965円。KDDI(au)やソフトバンクを約5000円上回った。

これは総務省の要請を受けた効果だ。来年春に打ち出す携帯電話の競争促進策でも中古市場を活性化策が盛り込まれる可能性もある。

ただ、中古品の普及には課題も多い。消費者の中古アレルギーを解消し、不正を抑えることが必要になる。一部のサイトでは割賦販売が済んでいない端末や、盗難端末が販売されているケースもある。携帯会社からロックがかかるため、購入しても使えない。

中古品の業界団体であるRMJは携帯市場の粟津浜一社長らが立ち上げて自ら理事長を務める。ゲオやTSUTAYA(東京・渋谷)など有力企業も会員に名を連ねる。中古スマホ市場の適正化を狙い業界のガイドラインも作っている。不正に入手した端末では製造番号を確認し、下取りしていいかどうかチェックする。RMJに加盟する店舗では安全な端末しか取り扱わないようにする。

粟津氏は「消費者がだまされて泣き寝入りするケースも少なくない。利用者が納得して購入できる体制を整え、安心して購入できるようにしていく」と強調する。

ゲオでは有料の中古端末保証サービスを新たに提供している。中古スマホが損傷した場合に修理を無料とし、端末購入価格のうち最大8割を限度とし修理してもらう。

 もう1つ重要なのはスマホメーカーが認定する「正規中古品(CPO)」の市場を整備することだろう。例えば、アップルや韓国サムスン電子が認定したCPOの専用工場が海外にある。電池などを取り換えており、新品と遜色がない。日本ではなじみが薄いが、海外では米国や新興国で根強い人気がある。

日本でも格安スマホ事業者がCPOの取り扱いを始めた。楽天モバイルは9月からインターネットを限定に、iPhoneのCPOの申し込みを受け付けた。「販売は好調だ」(楽天)。iPhone6sプラス(128ギガバイト)のモデルであれば、キャンペーンの適用で3万4800円(税別)だ。KDDIグループのケーブルテレビ最大手、ジュピターテレコム(JCOM)やビッグローブなどもCPOを取り扱った。

ただ、CPOは基本的に海外工場から専門業者を通じて調達するために販売を簡単には増やせない。JCOMのモバイル事業部の山部裕司部長は「用意した分は売り切れた」と話す。

日本の携帯電話市場では15年が「格安スマホ元年」と呼ばれ、国内の格安スマホの契約者は1000万件に達した。ただ、大手3社が対抗策を打ち出して格安スマホの勢いは鈍った。KDDIなどは割安な料金プランを提示した。ソフトバンクは「ワイモバイル」、KDDIはグループで「UQモバイル」といった格安スマホブランドの展開も加速、iPhoneも選べることから顧客を増やしている。楽天は自らインフラに投資して通信会社になることを目指している。

国内の携帯電話市場で健全な競争が起きるには中古スマホ市場の整備が欠かせない。これにより使用後も売らずに手元に置いている多くの消費者がiPhoneを手放し中古品市場が活性化される。割安で安全なiPhoneを気軽に手に入れられれば、通信会社も自由に選べる。

実際、巨大な米国市場では最大手のベライゾン・コミュニケーションズを筆頭に「リファブリッシュ端末」と呼ぶ高品質な中古品を扱う。激戦市場で顧客を拡大するには中古品が重要なのは欧州を含めて「世界の常識」だ。

日本で高い携帯料金を支えているのは消費者の新品指向だ。ビックカメラやイオンなど大手が中古品販売の強化に動く中、この市場が消費者から認知されれば、携帯電話ビジネスは大きく変わる可能性がある。

(企業報道部 大西綾)

[日経産業新聞 2017年12月27日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_