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スキー産業復活・強化へ 皆川賢太郎氏が描く未来

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2006年のトリノ冬季五輪で4位入賞したアルペンスキーの皆川賢太郎氏(40)が全日本スキー連盟(SAJ)の強化部門トップに当たる競技本部長に就任して半年がたった。従来のマーケティング担当と「二足のわらじ」をはいた元トップレーサーは停滞してきたスキー産業の復活と強化の底上げを視界にとらえる。

「(強化のための)予算を5倍もかけている国と戦っている選手もいる。そのなかで成績を上げている彼らの努力はすごいが、十分に知ってもらえていないのは我々の能力のなさ。彼らが望む環境はまだまだできていない」。自戒も込め、皆川氏はSAJに辛辣な目を向ける。年功序列の色濃かった競技本部長に40歳で就任するのも、マーケティング分野を兼務するのも異例の人事。日本オリンピック委員会(JOC)などから受け取る補助金を当てにしてきた連盟を「自ら稼ぎ、強くなる集団」に変えるエンジン役こそ自らの役割と心得る。

強化費の大部分を占めるとみられる旅費支出はここ数年、4億円前後の横ばいで推移してきた。近年は「選択と集中」で限られたパイをメダルに近い種目に振り分け、14年ソチ五輪でも7個のメダルを獲得。しかし、そのしわ寄せは層の厚い花形競技にやってきた。皆川氏や佐々木明氏、そして34歳で現役の湯浅直樹が世界に追いつき、食らいついてきたアルペンスキー界も強化費削減の波にさらされ、後に続く若手は世界の壁の前になすすべもない。こちらを立てればあちらが立たず。このジレンマに対する皆川氏の答えは「支出ばかり意識しても考え方が狭くなる。それなら全体の収益を増やして使えるようにしたらいい」と明快だ。

「スキー連盟には国などからもらえる強化費とは別に自分で生み出す力もしっかりある」。前期の経常収益約9億7千万円のうち、補助金などは約2億8千万円と3分の1に満たない。多くの資金はSAJへの会員登録や、指導員などの公認料、検定料といったスキーに携わる人たちから集まっている。自助努力の余地がありながら、無為無策のままスノースポーツの人口減の波にさらされるこの部分の「底上げ」とみるスポーツとしての「興行化」。これが皆川氏が掲げるキーワードだ。

11月25日、東京・銀座でスキー用品や小売り、スキー場関係者らが集まった第3回の「スキー未来会議」。皆川氏が呼びかけ昨年10月に立ち上がった在野の会合では、悲観するに及ばぬ産業の可能性が示されながら、そのチャンスを生かせない関係者のもどかしげな声がない交ぜになった。スキーブームを巻き起こした映画「私をスキーに連れてって」の公開から今年で30年。バブル景気の崩壊とともにその足元も怪しくなり、スノースポーツの人口はピークの1998年の約1800万人から15年に740万人まで減った。ただ、国内の衰退とは裏腹に、日本の雪山への評価は世界で年々高まる。「パウダースノー」の雪質は交流サイト(SNS)を通じて世界に広まり、観光庁による訪日客調査では「次回の訪日でしたいこと」で「スキー・スノーボード」はオーストラリア人で62.7%と項目中の1位。中国人も24.2%と「その他のスポーツ」(4.5%)、「スポーツ観戦」(5.8%)などを大きく上回った。

それでも送迎の準備が整い、上客が引きも切らないのは北海道ニセコなど一部の地方だけ。言語のできるインストラクターやアジアの初心者向けのスクール不足がネックとなって、実際にスキーを楽しんだ人は訪日客の2.7%にとどまる。"需給ギャップ"を埋めるためにも「指導員の育成策を立てたり、海外から迎え入れるためのビザ緩和を国に働きかけたりするなど、SAJがやるべきことは多い」と皆川氏。時代に立ち遅れた「アナログ」な運営もスキー離れを加速させかねないと危機感を募らせる。「いまだに多くのスキー場では財布を携帯し、紙のリフト券を見せないとリフトに乗れない」。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を学ぼうと、先行するプロ野球楽天の担当者を未来会議にパネリストとして招き、10月には本拠地「Koboパーク宮城」を視察に訪れた。国内外の客足を雪山に向けられれば会員登録や公認、検定料にも跳ね返る。スキーをつかさどる団体でありながら、産業振興は民間任せになっていた慣習を改め、「SAJがすべてのプラットフォームにならないと」と皆川氏は強調する。

独自財源の確保に向けたもう一つの柱が「観(み)るスポーツ」としての発展だ。アルペンのトップ選手として世界を飛び回った皆川氏は、多くの観客を熱狂させ、テレビ放映や賞金でも興行として確立している欧州のスキー文化を肌で感じている。対してSAJの放映権収入は毎年多くて2000万円ほど、広告料は500万円にも届かない。放映権だけで億単位の金が動く野球やサッカーに比べればすずめの涙だが、五輪期間しか冬季競技への関心が向かない日本で一足飛びにいかないことはわかっている。「金を積んでワールドカップ(W杯)や世界選手権を呼んでも、国内で文化も創っていないのに好きな人しか見ない」。一歩として、昨季から全日本チームの愛称を「SNOW JAPAN」と命名し、発信した。「他の競技団体のまねごとではなく、スキーとスノーボードが同じ団体に属することすら大半の人が知らない。多種多様の競技に唯一くくれるのが『スノー』という言葉だった」。5月には選手の知名度を上げようとトップ選手を表彰する「アワード」を初めて開催し、12月に立ち上げたオンラインストアではSAJとして事実上初の商品開発となる「SNOW JAPAN」のロゴ入りTシャツなどの販売を始めた。こつこつとブランド価値を高めていく一方で、スポンサーにはスキー・スノーボード全体への支援を働きかけている真っ最中。「好きな選手や競技に単発でスポンサーがつくのではなく、これからは束になってかからないと」

マーケティング担当としての改革の一方で、競技の側からも手を打った。年末に開かれるアルペンの全日本選手権。6月に競技本部長に就いた皆川氏は、優勝者に五輪の出場内定を与えることを決めた。唐突な感もあった選考価値の付与に様々な臆測も生んだ決断は、「(競技を)知ってもらうためにも、やっている人たちに公平にチャンスがあるという透明性が大事」との考えから。言い換えれば、W杯の獲得ポイントなどを基に「内部」で決まっていた代表争いを一部で"開放"し、世間の関心事に変える狙い。五輪代表枠を競い合い、注目を集めたフィギュアスケートの全日本選手権などはその道しるべだろう。平昌五輪後を見据えて「一から見直す」という強化費の割り振りでもなたを振るい、競技人口の多さや付帯産業への波及効果、他種目へのコンバートの可能性、興行に適しているかどうかなどを総合的に判断し、「全体の『経営』の観点からサポートする概算を立てている」という。メダルの取りやすさという近視眼的な見方だけでなく、「投資(強化費)の回収」といった複眼的、長期的視野でも強化を捉える。

矢継ぎ早の改革の先には壮大だが、決して夢とは思わぬ構想もある。1年を通じて楽しめる「アリーナ・スタジアム」としてのスノードームの建設だ。参考にしているのは、何度も訪れたいと思わせる非日常の空間として「Bリーグ」でもアリーナの重要性を説いた川淵三郎氏の考え方。千葉県船橋市にあった「スキードーム ザウス」はバブルのあだ花としてすっかり有名になり、負のイメージが根強いが、「ザウスはゼロから骨組みを組んで、地熱にもさらされたあまりに金がかかる仕組みだった。傾斜地を囲って普段は捨てるほどある雪をうまく活用すれば、もっと効率的に運営できる」というのが皆川氏の見立て。実際、オランダやドイツ、ニュージーランドなどにある同様の施設では、ホテルやショッピングモールなどが一体開発され、大会やイベント開催を通じてにぎわいの場になっているケースもある。SAJ単体でできる事業ではないものの、民間との連携も視野に入れ「目標は10年といわず5年以内」とまなざしは真剣だ。

産業振興が選手の強化につながり、興行の担い手としての選手の活躍が振興にも循環していくのが皆川氏の思い描く未来。西武鉄道グループが開発した新潟・苗場スキー場で育った皆川氏は言う。「私は(同グループをかつて率いた)堤義明さんがいて日本のスキー産業はできたと思う。ただ、その恩恵でずっと食べるわけにはいかない。そのアップデート、転換ができてこなかったのが日本のスキー業界。今、それがいい時期にきているのだと思う」。停滞を打破するにはSAJ全体の意識改革も欠かせないが、「普通私がこの年齢で、強化も金も管理してなんてことはあり得ない。しかし、今は互いがやっている目的がはっきりしているから、若いから、という話にはならない。スキー連盟はかなり変わる思う」。改革の旗手としての挑戦はまだ始まったばかりだ。

(西堀卓司)

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