胡総書記「長老引退を」 中国、鄧氏と人事で温度差
外務省が20日公開した外交文書では、1987年の第13回中国共産党大会について、長老格の引退をにらんだ指導部の若返り方針を巡って、最高実力者の鄧小平氏と胡耀邦党総書記の間に「温度差」があったこともあらわになった。それぞれ86年11月に中曽根康弘首相と個別会談した際、70歳の胡氏は「年寄りを引退させる」と若返りに意欲を示した。82歳だった鄧氏は自らの進退に関して「退職を考えているが、反対する人が多すぎて困難にぶつかっている」などと話した。
胡氏は、中曽根氏との会談の約2カ月後に失脚した。専門家は「意見の違いがあったのではないか。十分な意思疎通を欠いていた可能性もある」と指摘している。
若手登用を巡って、鄧氏は中曽根氏との会談で「党大会で一歩踏み出すだろうが、とても完成しない。(97年の)15回党大会で完成したい」と性急な交代に否定的見解を示した。「自分が成し遂げられるものではないし、胡耀邦か趙紫陽(首相)がやり遂げられるものでもない」とも強調。その上で、自らの進退を巡る現状に言及した。
胡氏は会談などで党指導部について「活力は不十分。平均年齢とも関係があろう」との見方を示し、13回党大会で「大幅な新旧交代が行われる」と語った。さらに「交代のテンポを一層速める必要がある」とも述べた。
その後、胡氏は民主化要求デモの対応を巡り失脚した。中曽根氏との会談で鄧氏は、普通選挙に関し「20年、30年後には実施可能かもしれない。反対しない」としつつ「中国ではまだ条件が整っていない。今はできない」と発言していた。〔共同〕