欧米や国連「ロイター記者釈放を」 ミャンマーに要求
「報道の自由」に後退懸念
【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害問題を取材中に逮捕された、ロイター通信の記者2人の釈放を求める声が国際社会で高まっている。グテレス国連事務総長に続き、欧州連合(EU)も早期釈放を求める声明を発表。同国の「報道の自由」の後退を懸念する声が日増しに拡大している。
ロイターのスティーブン・アドラー編集主幹は19日に声明を発表し、「ミャンマー政府に記者の早期釈放を求める」と訴えた。逮捕から1週間が経過したが、アドラー氏は「いまだに逮捕された2人への面会は認められておらず、どこに拘束されているかも分かっていない」と明らかにした。
記者逮捕を受け、国際社会はミャンマー政府への批判を強めている。EUは18日の声明で「2人の人権尊重と早期釈放を期待する」とし、「報道の自由は民主主義の根幹をなす」とミャンマー政府の姿勢を批判した。グテレス事務総長も15日、「ミャンマーの人道危機を報じようとしたことが逮捕につながった可能性が高い」と懸念を表明。米国や英国、日本も追随した。
逮捕されたのは、ロイターのヤンゴン支局に所属する31歳と27歳のミャンマー人記者2人。12日夜、ロヒンギャに対する掃討作戦にあたった治安部隊の内部文書を所持していたとしてヤンゴン市内で逮捕された。警察関係者との会食後、「逮捕された」というメッセージを送信したまま音信不通になったという。
ロイターによると、ミャンマー大統領府は18日、警察当局が訴追手続きを進めることを認める決定を下した。逮捕から1週間が経過した現在も、家族や弁護士との面会は認められていない。
ミャンマーでは2011年の民政移管を受け、翌年から国営紙以外の新聞発行や外国報道機関の支局開設を解禁。報道の自由を巡る環境は徐々に改善し、欧米各国も記者の人材育成などを支援してきた。今回の記者逮捕は衝撃を広げそうだ。