マンション理事長、理事会が解任可能 最高裁
マンション管理組合の理事会が理事長を解任できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(大谷直人裁判長)は18日、「解任できる」との初判断を示した。多くの管理規約は理事会での解任の可否を明文化しておらず、他のマンションのトラブルにも影響しそうだ。
第1小法廷は管理規約について「選任は原則、理事会に委ねられており、理事会の過半数による解任も理事に委ねられている」との解釈を示した。「解任は無効」とした二審判決を破棄し、理事会の手続きに問題がなかったかをさらに検討すべきだとして、審理を福岡高裁に差し戻した。
訴えを起こしたのは福岡県のマンション管理組合の理事長だった男性。2013年、男性が業務を委託する管理会社を変えようとしたところ、他の理事らが反発。「理事長は解任した」と住民に通知した。男性は解任は無効だと訴えていた。
このマンションの管理規約は、「理事長は理事の互選で選ぶ」と定める一方で、理事会の判断だけで理事長を解任して単なる理事に「降格」させられるかどうかは明記していなかった。
一、二審判決は管理規約に定めがない点を重視し、「在任中の理事長の意に反して理事会が地位を失わせるのは許されない」として男性の主張を認めた。敗訴した管理組合側は上告し、「理事長を選任した理事会が解任もできるのは当然だ」と訴えていた。
8割以上のマンションの管理規約は、国土交通省の「マンション標準管理規約」をひな型としており、今回と同じように解任について明記していないケースが大半とみられる。
マンションの理事会では管理会社の選定や予算の使い方などをめぐってトラブルが起こりやすい。専門家によると、実務の慣行や学説では「解任できる」との考えが有力とされ、これまでも相談を受けた弁護士などが理事長解任を提案することが多かった。最高裁の判断が示されたことで、今後、理事長を解任しやすくなるとみられる。
国交省は「最高裁判決の内容を精査し、必要があれば標準管理規約の見直しを検討したい」と説明している。