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薬にセンサー「デジタル薬」 大塚製薬が実用化

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大塚製薬は医薬品と医療機器を一体化した「デジタル薬」を世界で初めて実用化した。11月に米食品医薬品局(FDA)から製造販売承認を取得、2018年春にも米国で発売する。抗精神病薬エビリファイの錠剤に極小センサーを内蔵、患者が薬を飲むと信号を発して通知する。薬をきちんと飲んでいるかどうかわかれば、適切な治療や医療費抑制につながる。

デジタル薬「エビリファイマイサイト」は、統合失調症などの進行を和らげる錠剤エビリファイに特殊なセンサーを入れてある。胃の中に入った錠剤が溶けると、センサーが胃液に触れる。するとセンサーから電気信号が出て、患者の腹部に貼り付けた受信用の検出器が信号をとらえる。

次に、検出器から患者のスマートフォン(スマホ)へブルートゥースで信号を飛ばす。スマホに取り込んだ専用アプリで情報が管理され、医師は専用サイトを通じて患者のアプリ内の情報をみることが可能だ。

センサーを構成しているのは、信号を送る機能を持っている1ミリメートル角のチップと、信号を飛ばしやすくするための工夫としてチップの周りに取り付けられた羽のようなセルロースだ。

米国法人でデジタル薬の実現に奔走した倉橋伸幸執行役員は開発の背景について「薬をつくって終わりではなく、もう一歩踏み込みたかった」と話す。医療機器のスタートアップ、米プロテウス・デジタル・ヘルス(カリフォルニア州)と12年に提携して開発した。

大塚製薬は既存のエビリファイと別商品としてデジタル薬を販売する。価格は未定で、既存品より高くするかどうかも含め検討を急いでいる。

統合失調症の患者の4割は、退院してから6カ月たつときちんと薬を飲まなくなってしまう。単純に飲み忘れたり副作用を嫌ったりする。自分が疾患を持っていることを認めない患者もいる。

指導された通りに薬を飲まなければ再発するリスクがある。再入院することになると医療費が膨らむ。倉橋氏は「薬を飲んだのに効いていないのか、そもそも飲んでいないのかが、医師にとって重要な情報」と話す。

アプリには服薬状況や患者のその日の気分も入力できる。患者が同意すれば家族らも服薬状況をサイトで閲覧できる。

患者が体に貼る検出器のパッチには加速度計が入っており、睡眠時の寝返りの状況などを知ることができる。倉橋氏によると、精神病の悪化の兆しはまず睡眠の乱れに表れる。早めに症状を察知できれば適切な治療につなげることが可能だ。

センサーから発せられる信号は微量なため、体内に入れても問題はない。倉橋氏は、センサーを構成する銅やマグネシウムは溶けないので人体に悪影響は及ぼさないと説明する。センサーは便とともに排出される。

プロテウスの技術はすでに医療機器としてFDAの承認を得ていたが、医薬品に応用するのに苦労した。センサーを壊すことなく錠剤を成形する機械を特注した。16年にはいちどFDAから申請を却下されている。その際は、患者がきちんと使えることを証明せよとの指摘があった。製品の箱や説明書を改善した。

大塚製薬にとってデジタル薬の実用化は特別な意味を持っている。08年から就任して15年に亡くなった、岩本太郎前社長の悲願でもあるのだ。

岩本氏は、同社が国際的な製薬会社になるきっかけとなったエビリファイの育ての親。倉橋氏は00年に米国に赴任して岩本氏と3年間、エビリファイ普及のため国中を駆けずり回った。グローバルの臨床試験を進め、販売委託先の製薬大手と条件交渉で渡り合った。

デジタル薬開発のきっかけは、米国法人の社員がプロテウスの技術を知り、面白いものがあると報告したことだった。

岩本氏は、エビリファイを患者にきちんと使ってもらう上でセンサーによる服薬管理の意義は大きいと考え、開発にゴーサインを出した。精神疾患で苦しむ患者を多く見ていただけに、迷いはなかった。倉橋氏には、承認を得たいま「ようやく岩本の志が形になった」との感慨がある。

海外のある製薬大手の社員がデジタル薬の話を聞いて倉橋氏に言った。「我が社の経営会議ではこの製品は通らないだろう」。薬そのものなら開発するかどうか検討の対象になるが、開発済みの薬にセンサーを入れるという取り組みは、開発費が膨らむ一方で集中と選択を急いでいる製薬業界では、テーマになりにくいというわけだ。

だが岩本氏は、どんなに効く薬でも飲んでもらえなければ意味がないと考えた。そのうえ、ポカリスエットやカロリーメイトを開発してきた大塚グループには他社にまねできない製品を作るというDNAがある。それは医療分野でも同じで、開発会社の少ない結核薬に力を入れていることなどに表れている。

大塚製薬はエビリファイマイサイトの日本での販売も考えている。まずプロテウスが医療機器として承認を得ることが最初のプロセスになる。

日本で新しいエビリファイを販売するときは新たに薬価を算定する必要がある。薬そのものの評価ではなく、センサーで飲んだかどうかを確認するという技術をどのように評価するのか。日本の医療界に突きつけられた課題だ。

(企業報道部 安西明秀)

[日経産業新聞2017年12月14日付]

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