米通商代表がWTO批判 「途上国に有利」
世耕経産相、電子商取引ルール提案
【ブエノスアイレス=外山尚之】米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は11日、ブエノスアイレスで開催中の世界貿易機関(WTO)閣僚会合での演説で「先進国は途上国に対し、不公平な例外を与えてきた」と批判した。WTOのルールが「途上国に有利になっている」と指摘。現状を維持することはできないと主張した。米国の「反WTO」の姿勢が改めて鮮明になった。
ライトハイザー氏は「WTOは焦点を失い、貿易紛争の場になっている」と強調。多くの国が検証なしに「発展途上国」として恩恵を受けているとし、「現在の仕組みは何かが間違っている」と、WTOの現在のあり方に疑義を呈した。
今回のWTO閣僚会合は米トランプ政権が発足してから、初めての開催となる。保護主義を強める米トランプ政権は、WTOが掲げる「多角的貿易」という理念に反対する姿勢を強めており、その出方に注目が集まっていた。ライトハイザー氏は「現状のWTOルールでは経済成長の達成は難しい」と述べるなど、米国がWTO体制における被害者だというトランプ氏のこれまでの主張に沿った演説を展開した。
一部メディアは、ライトハイザー氏が閣僚会合の閉幕を待たずに帰国すると報じた。通常、閣僚会合の最終日には全加盟国・地域の合意を経て「閣僚宣言」を出す。米国がWTOへの反対姿勢を改めて示したことで、全会一致での宣言採択は一層、難しくなった。
一方、閣僚会合に出席中の世耕弘成経済産業相は同日夜、日本メディアの取材に対し、途上国が「特段、優遇されているとは思わない」と述べ、米側の主張を否定した。世耕氏は「日米で問題意識を共有し、WTOの価値を高めるという姿勢で臨んでいきたい」と話し、米国との対話を続ける姿勢を示した。
日本政府は今回の会合で電子商取引の国際的なルール作りを提案し、3億ドル(約340億円)の拠出を表明した。途上国の通信網などのインフラ整備を支援することで、先進国対途上国という対立構造の解消を狙う。