AI開発のプリファード、日立・三井物産など20億円出資
人工知能(AI)開発スタートアップのプリファード・ネットワークス(東京・千代田、西川徹社長)は11日、日立製作所や三井物産などを引受先とした第三者割当増資で約20億円を調達すると発表した。調達した資金は計算環境の拡充や、人材の獲得に充てる。8月にトヨタ自動車が約105億円を出資しており、プリファード・ネットワークスはこれと合わせて総額約130億円を調達した。
日立、三井物産、博報堂DYホールディングス、みずほ銀行、ファナックがあわせて20億円超を出資した。ファナックは2015年に9億円を出資しており、追加の株式取得となる。
プリファード・ネットワークスは、機械学習やディープラーニング(深層学習)を活用したデータ処理ネットワークなどを開発するAIスタートアップだ。東京大学と京都大学のプログラマー6人が起業メンバー。前身企業を06年に興し、14年にプリファード・ネットワークスを立ち上げた。
膨大なデータをエッジ(端末側)で深層学習処理をする「エッジヘビーコンピューティング」を提唱。自動車などの交通システム、製造業、バイオ・ヘルスケアに重点を置き、技術開発に取り組んでいる。
17年9月には、民間企業が持つものとしては国内最大級のスーパーコンピューターを導入。国立がん研究センターなどと取り組むがん医療システムの研究開発での活用を進める。
また8月には米カリフォルニア大学バークレー校のピーター・アビール教授をテクニカルアドバイザーとして招き入れた。アビール教授は深層学習を活用したロボットの制御で最先端の研究成果を数多く発表しており、外部の人材をアドバイザーとして招き技術の底上げを推し進める。
プリファード・ネットワークスは、これまでトヨタやNTTなどと資本業務提携し、AI活用を進めてきた。トヨタとは14年に共同研究を始め、15年に10億円、17年8月には105億円を調達した。今回の資金調達で手を組む各社との具体的な協業内容は、今後詰める考えだ。プリファード・ネットワークスは「各社の事業内容に合わせ、深層学習技術を効果的に活用できる分野で協業する」としている。
日本経済新聞社が11月に発表した未上場企業のランキング「NEXTユニコーン調査」でプリファード・ネットワークスは、推計企業価値が2326億円で108社中首位だった。今回の増資で企業価値がさらに向上するとみられる。
(企業報道部 矢野摂士)