京都府知事、5選不出馬表明 多選批判にも配慮
見極め 試される有権者
京都府の山田啓二知事(63)は6日の府議会代表質問で、2018年春の府知事選に立候補しない意向を正式表明した。山田知事は「自らの職責をある程度果たしたと思ったならば、次の方に次の時代を委ねるべきだ」と述べ、多選批判にも配慮して4期目の任期満了をもって知事を退く考えを示した。全国知事会長でもあり、地元経済界などから続投要請を受け始めていた山田知事の決断は、他の知事選の動向にも影響を与えそうだ。
山田知事は代表質問後の記者会見で、多選に否定的な立場を取ってきたこともあり、当初は3期目で勇退する考えだったとした。東日本大震災の発生や全国知事会長への就任で続投したものの、「(後進に道を譲るという)思いは消えることがなかった」と語った。
自身が仕上げと位置づける4期目には、文化庁の京都移転を巡って京都市や経済界などと連携し、「オール京都」の府政運営体制も実現。今後、府議会最大会派の自民党を中心に候補者選びが本格化するが、山田知事は「京都を心から愛する人にオール京都の府政を担ってほしい」と話した。
地域の行政トップである知事は、山田知事をはじめ、実務能力にたけて国とのパイプもある中央省庁の官僚出身者を中心に当選回数を重ねるケースが多い。
今年7月の兵庫県知事選で5選を果たした井戸敏三知事(72)。当選確実が報じられた直後の記者会見で多選を問われると、「単純に足し算で批判する問題ではなく大切なのは何をやってきたか、何をやっていくかだ」と語気を強めた。
もっとも選挙戦では対立候補の多選批判にさらされ、その影響からか得票数は初めて100万票を割り、得票率も自己最低の51.2%だった。
石川県では、谷本正憲知事(72)が18年春の知事選で現職最多となる7選をめざしており、県議会最大会派の自民党石川県連のほか、公明党石川県本部など主要政党の推薦を固めた。9月の出馬表明の際は、多選批判について「県政の私物化や停滞を招くといった弊害は絶対あってはならないと肝に銘じている」と強調している。
高知県の尾崎正直知事(50)は現在3期目だが、過去2回は無投票再選だ。県民の支持率が高く、4選目に出馬しても無投票との観測も出る。
鳥取県知事を務めた片山善博・早稲田大学教授は多選について、「ひとつの権力が長くとどまると必ず弊害が生まれる。意見や文句を言う人がいなくなると組織が萎縮し、議会のチェック機能も働きづらくなる」と指摘する。
ただ、「その自治体の行財政に精通し、長期的な観点から計画を立てることができる」(近畿大学の辻陽教授)のも事実。地方政治と地域活性化は密接に関わるだけに、有権者が選挙に無関心にならず、チェック機能を働かせる必要がある。