天理大、スクラム磨き連覇 関西大学ラグビー
スタイルを同じくする者同士の戦いは自然と「熱戦」の雰囲気を醸す。四つ相撲にたけた力士がぶつかる一番や、果敢に前に出る好戦的なボクサー同士の一戦。11月19日に滋賀・皇子山陸上競技場で行われたラグビーの関西大学リーグ、天理大―京都産業大の5戦全勝同士の対決は、互いの強力FWの対決が見る者の心を打った。
今や京産大の代名詞になった感のあるスクラム。体重117キロのプロップ酒井健汰を軸に、相手の第1列をめくり上げる破壊力を誇る。天理大もスクラムでは負けていない。体重が100キロを超える西川和真、木津悠輔の両プロップらをトンガ出身のナンバー8、ファウルア・マキシが後方から押し、8人一体で相手FWを後退させる。
前半早々にそのスクラムで両軍が激突、まずは京産大が面白いように押した。あまりの圧倒ぶりに天理大FWの状態が懸念されたが、杞憂(きゆう)にすぎなかった。前半7分、京産大の重圧を受けながらも隊列の整ったモールを維持し、先制のトライ。同32分にはお返しとばかりにスクラムトライを挙げた。
ハイライトは天理大が21-7とリードして迎えた前半ロスタイム。敵陣深く進み入った京産大は天理大の反則で得た攻撃機会にあえてスクラムを選択。天理大との激しい押し合いは肉弾戦の醍醐味を存分に示した。このピンチをしのいで勢いに乗った天理大は45-7と大勝し、2連覇が確定。11月25日の最終節でも同志社大に勝ち、昨季に続く全勝優勝を果たした。
木津によると、最初のスクラムで押されたのはレフェリーとの呼吸のずれなどが原因で、決して力負けしたわけではなかった。合図のタイミングや相手FWの出方が分かれば恐るるに足らず。スクラムトライを挙げた時点で「きょうはFW戦で勝てると思った」と振り返る。
トップリーグで屈指のスクラムを誇るヤマハ発動機への出稽古で鍛えたスクラムはだてではない。肝はFW8人がわずかな隙間もできないほど密着し、良質な「バインド」をつくること。京産大との対戦に向けては「相手の伝統的な押し方をBチーム(2軍に相当)に再現してもらってきた」(木津)。
12月23日に初戦を迎える全国大学選手権で初優勝を目指す。昨季は準決勝で帝京大に敗れたが、後に8連覇を果たす王者をスクラムで押す光景は観衆のどよめきを誘った。今季の帝京大はスクラム強化に努め、関東大学対抗戦を7連覇。東西の雄が再び相まみえれば、こちらも手に汗握る熱戦になるはずだ。
(合六謙二)