IoT第2幕はリアルで勝負、データ流通推進協議会が始動
センサーデータを含む様々なデータを流通させることを目指して2017年11月1日に設立された一般社団法人「データ流通推進協議会」が本格的に活動を始める。11月27日に設立総会を東京都内で開催、8人の理事を選出した。理事長には慶応義塾大学教授の村井純氏が就いた。残り7人の理事は、オムロン、大日本印刷、富士通、日立製作所からの各1人、東京大学教授の越塚登氏、同大学教授の柴崎亮介氏、慶応義塾大学教授の中村伊知哉氏である。
同協議会では、センサーが生み出すデータ、個人や組織の活動に伴い生じるデータ、官庁などが集計した統計データが、スムーズに流通する環境を整備していく。例えば、個人が自分の活動データを安心して提供でき、ビッグデータ解析などのために必要とする事業者が容易に入手できるようにする。データ形式などの技術基準、データの売買や保管に関わる事業者の認定基準などを決める。策定する一連の基準は、法整備や国の政策に反映させることがある。このため同協議会には、官庁からオブザーバーとして内閣官房、総務省、経済産業省が、設立前から携わってきた。
既に30社以上の民間企業が参加しており、今後も地方公共団体、学術機関、行政機関、民間団体、NPO団体、個人から参加を募っていく。
今回の設立総会で同協議会は、データ流通に関わる事業者について、順法性などの観点から認定する基準を2018年7月までに策定することを明らかにした。認定された組織などを同年8月までに公表する。データの確度や密度などに関わる品質の標準化も進める。標準仕様を2018年中にまとめる計画である。データ流通時に参照される項目の標準仕様も2018年までに作成、同年中に利用可能にする。
個人データの流通に関しては、EU(欧州連合)が個人情報保護を主な目的とした規則「GDPR(General Data Protection Regulation)」を制定し、2018年5月に実施する。データ流通推進協議会の取り組みは、GDPRの取り決めを踏まえたものとする。双方の規則に矛盾がないように配慮し、例えばEUで活動する日本の企業にとっての不自由が生じないようにする。
設立総会では、内閣官房の情報通信技術(IT)総合戦略室長代理で副政府CIOの神成淳司氏、大臣官房総括審議官(情報通信担当)の吉田眞人氏、経済産業省 商務情報政策局長の寺澤達也氏が、それぞれ講演した。寺澤氏は、日本企業がインターネット上のバーチャルデータの活用で後れを取っている状況を踏まえ、今後はセンサーや個人の活動に伴うリアルデータの活用が本格化するとして、リアルデータを核とした政策を推進していくとした。データ活用に伴う設備投資をする企業を税制面で優遇する制度を導入する。
(日経テクノロジーオンライン 三宅常之)
[日経テクノロジーオンライン 2017年11月28日掲載]